【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。


 メディアの取材を受けている時、取材をしている人が「そういえば、烏丸シェフ。以前熱愛報道が出ていましたよね?」と唐突に切り込んできた。

「っ……!」

 な、なんてことを聞くの……!? 全然料理の話と関係ないよね!?

「……それが何か?」

 でも翡翠さんは何事も動じることなく話をしている。

「熱愛報道のお相手との交際は、事実ですか?」

 交際相手の私が目の前にいるということに気付くことなく、メディアの人は話を進めてくる。

「ええ、事実ですよ」

「えっ!?」

 言っちゃうの!? 翡翠さん、言っちゃうの!?

「事実、なんですね?」

「事実です。あの記事の通りですよ」

 翡翠さんは、なんであんなに冷静でいられるのだろうか。
 私なんてビックリして、オドオドしているといるというのに。

「ちなみに交際相手は元女優さんというウワサもあるようですが、それも事実ですか?」

「それは事実じゃないですね」

「ほう? では交際相手は元女優、ではないということですか?」

 あの記者、めっちゃ聞いてくるじゃん……!
 まるで取り調べを受けているかのような、そんな錯覚を起こしそうになる。

「はああ……なんか緊張しちゃう」

 よくわからないけど、心臓の音がうるさくなる。

「どこからそんなウワサ出回ったかわかりませんけど、僕の交際相手はそこにいる゙彼女゙ですが」

「はい?彼女?」

「……ん?」

 え? えっと……えっ?
 
「そこに立っている彼女が、僕の交際相手ですよ。記者さん」

「……えっ!?」
< 86 / 103 >

この作品をシェア

pagetop