【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。


 ちょっと待って!? ウソだよね?

「烏丸シェフ、あそこに立っている彼女が、烏丸さんの交際相手ですか?」

 記者さんまで私を見てくる。

「そうです。 あ、せっかくなので記者さんにも紹介しますよ」

「へ……?」
  
 状況が着いていけないが、翡翠さんに名前を呼ばれたことだけはわかる。

「豊佳、早くこっちに」

「……あ、はい」

 渋々翡翠さんの元へ歩いていく。

「記者さん、この人が僕の交際相手です。 豊佳です」

「豊佳……さん、ですか?」

「この人が僕の交際相手ですよ、記者さん。元女優ではありません。……ですが彼女は一般人ですので、今回の熱愛報道についての記事については、触れないでいただきたいのですが」

 翡翠さんが真剣な眼差しを向けている。

「もし彼女のことを記事にしたら、彼女には迷惑がかるということを、記者ならご存知ですよね?」

「ええ、それはもちろん」

「あなたが聞き分けのいい方で良かった。 彼女は一般人で、芸能人ではありません。誹謗中傷や批判に晒されるのだけは困ります。……ですので、どうかこのことは記事にはしないでいただきたい」
 
 翡翠さんのお願いに、記者さんも理解を示しているようで、「もちろん、僕にも記者としてのプライドはありますが、このことを記事にするつもりはありません。……熱愛報道が事実だったということがわかったので、それで充分です」と話してくれた。

 そんな記者さんに、翡翠さんは「ご協力、感謝いたします」と微笑んで見せた。

 な、なんか……これって一件落着、なのかな?
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