私たち、幸せに離婚しましょう~クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない~
「主真さんは、私の初恋なんです」

 一瞬、目を見開いた守山は、フッと笑った。

「そうか。それならお手上げですね」

 沙月は、再び頭を下げて廊下に出た。

(初恋、か)

 口に出した途端、胸がいっぱいになった。

 理屈じゃない。

 もしあのときでなく、薄羽の危機に守山との縁談があったとして。
 もし彼が資産家だったなら。

 勧められるまま、望まれるまま、彼と結婚したかもしれない。

 二年という期限なんて最初からなくて、穏やかで温かい家庭を築けたように思う。

 でも、これだけは言える。

 主真を想うだけで、狂おしいほど心を揺さぶられる今のようにはならなかった。

 たらればの未来に確証なんてないけれど、本能のようにわかる。

 沙月にとって主真は、唯一無二の存在なのだ。

 ほかの誰かではなく、彼だから。

(私は、恋をした)



 理事長室の前で、大きく息を吸い気持ちを整える。

 ノックをすると、「はーい」という上機嫌な返事が返ってきた。

 いつもの秘書の返事とは違う声だ。
 首を傾げながらドアを開けると。

(えっ? 美華がどうしてここに?)

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