Summer Love
「隼斗!?何でお前も!?」
隼斗も俺は知っている。
いつも、友香が口煩く話題に出してくるものだから、名前を覚えたのだ。
こいつも、厄介な生徒ではある。
その理由は単純。
「話せば長くなるんだよ……修先生ーーこいつが、俺にこき使ってーー」
思いっきり、友香に足を踏まれてしまう隼斗。
言わなければいいことを、口走ってしまう馬鹿。
こいつと一緒にいれば、楽しい事はあるのだがーーーこいつのために頭を下げた回数は計り知れないので、同時にいると労力と気力が奪われる。
だがしかし、どんまいだな。
隼斗。
ピンヒールでないとしても、痛みは計り知れないだろう。
「いってぇ!?!お前、何すんだよ!!誰がこのホテル代出してると思ってーー!!」
「うっさいわね!!怒らせた罰!!こき使うって言ってたけど、あんたが勝手についてきただけでしょ?嫌なら断ればよかったじゃない!!」
終始2人は睨み合い、口喧嘩が始まった。
「二人ともどこで俺の情報を手に入れたんだ?」
呆れを通り越して、とりあえず二人を離して友香に事情聴取。
「もちろん、隼斗から」
「本当なのか?」
「異論はーーーない………否めねぇ………クソッ!!」
「んで?誰が、このクローバーに来ようっていい出した?部活動は?」
「1週間だけ休みをもらったわ。監督が許可してくれたの。も……もちろん、提案したのは隼斗よ!!」
「はぁ!?お前、まじかよ……」
隼斗は涙目を浮かべ、顔が引きつっている。
バチッ!!
デコピンをお見舞いした。
「痛った!!ちょっと、何するのよ!!未来のお嫁に暴力を振るなんて、それでも新郎なの!?」
もちろん、手加減して。
「だから、いつから俺がお前と結婚したんだ?この悪評女」
「言ったわねぇー!!」
近づいてきた友香。
それを押しのける様に、隼斗が前にやってきた。
へ?
「修先生……抱いてくれよぉー!!初めて、友香に逆らった、いい男の中の男すぎて惚れたぜ!!」
いきなり目を輝かせて、隼斗俺に抱きつく。
「や……やめろ!!気持ち悪い!!!」
「ちょっと、隼斗!!私の新郎に抱きつかないでよ!!頭おかしいの!?」
2人に、揉みくちゃにされていた時。
「君たち、見苦しいよ。辞め給え。皆君たちに注目してるよ」
凛とした、凛々しい声が聞こえた。
それは紛れもなく、キザな男の声。
俺はその声の正体を知っている。
「春馬……零……なぜお前がここにいるんだ?!ロンドンに留学中なんじゃなかったのか?!」
「そんなに驚かないでくれよ。修先生。1年ぶりなのに、もうそんな長い月日が経ったみたいに、謙遜されたらこちらとしても困るよ」
春馬零ーーーそれは、1年前俺の勤めている高校在校生だった。
キザな態度に、在学中多くの女子に支持されていた美男子。
金髪の髪が、靡く姿はオスカルに似ている気がする。
零の実家は、音楽家で太く本当はこんな平凡な学校に来るべき人間ではないはずだった。
だが、両親は厳しく「一般社会に溶け込める期間も必要だから、普通の高校に進学しなさい。そうしなければ、有名音大学は受けさせない」と啖呵を切られてしまったとのこと。
仕方なく、俺が勤めている高校に入学していたらしい。
相変わらずバイオリンの腕はプロ並みで、学園祭の発表ステージの時に有名音楽家の人が、拝見しうるぐらいの腕前。
ますます、音楽家としての活動を在学中に極めて今もまだ「ファンクラブ」が存在しているくらいだ。
そんな彼は卒業後、イギリスの名門音大を合格し留学しているとは聞いたがーーー。
「あれ?零先輩、純奈先輩はどうしたんですか?婚約したんでしょ?一緒じゃないの?」
友香が「純奈」という言葉を、発した瞬間ずきりと頭に痛みが走る。
それは胸も苦しいような、よくわからない不快感。
「友香、実は修先生が純奈に取られるんじゃねぇーかって心配してたりすんのか?他人の婚約には、首を突っ込まねぇーくせに、こんな時にマセやがってーーー」
また、隼斗踏まれる。
「いっ!?!ほ……骨折れたかもっ!?!」
「お前って、本当馬鹿なんじゃないのか?黙ってればいいものを……」