敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
 日に当たることが少ないせいか、香澄は真っ白な肌の持ち主だ。
 丸い綺麗な卵型の顔と大きな瞳はともすれば少し童顔に見られてしまう。日本人形のような容貌の持ち主だった。

 テーブルと椅子を片付け教室に鍵をかけ、母屋に向かう。
 母屋の一室から大きな声が聞こえていた。廊下にまで聞こえるほどの大声でしゃべるのは伯父だろう。

 ちょうど母がキッチンから出てきてお茶を持っていくところだったらしく、手に茶器の載ったお盆を持っている。

「香澄ちゃん、ちょうどよかったわ。伯父さまにお茶を出してくれる?」
「あら、タイミングが悪かった?」
 ちょっとおどけて香澄がそう言うと母は苦笑する。

「私にはとてもいいタイミングだったわよ。そう言わないで? お父さんのお兄さんなんだから」
「はあい。お稽古の道具を部屋に置いたら持っていきます」

 香澄が引き受けると母は安心したようにキッチンに戻っていった。

 自室にお稽古用の道具を置いて、香澄はキッチンでお茶の用意をしてくれていた母からお盆を預かり、客間へ向かったのだった。

 まさか、それが大変な事態を招くことになるとも知らずに。

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