最強男子はあの子に甘い
「な、永田くんどうしたの……!?何かあった!?」
 
 私が訊きたかったことを湯川くんがすぐに代弁してくれた。
 イテテ、と呟きながら自分の席に座った永田くんには、制服を着ていて見えないだけで体にも痣があるのだろうと察する。
 
「きのう、ケンカ売られてさ」
「え……永田くんが負け……」

 湯川くんが青ざめながら言いかけたところ、すぐさま「負けてねぇし!」と彼の頭を叩いて永田くんが修正した。
 いつもなら笑っているそんなやりとりも、私と湯川くんは笑えないままだ。

「まあ、さすがに五対一でちょっとやばかったけどな」
「……もしかして、私のこと送ってくれたあと?」
「んだよ、心配してんの?さては俺と付き合いたくなった?」

 いつもの調子で軽口だけど、それが質問に対する答えにも聞こえて私は申し訳なく思いうつむいてしまう。
 
「……いや、紗宇と一緒じゃなくて良かったよ。正直、守りながらなら負けてた。紗宇にもしものことがあれば井原さんが怖ぇーし」
「彗くんは……私に何かあっても永田くんのせいにはしないよ、きっと」
「紗宇は井原さんのことずいぶんよく知ってんだな」
「え……?」
「井原さんに今回のこと報告したら、何よりもまず謝られたから。任せて悪かったって。最近、この辺うろついてる他校生ってのが井原さんのこと狙ってるって噂で、自分が守ると逆に紗宇が危ない目に遭うんじゃないかって心配して俺に預けてくれただけなのにな。……なんか勝てる気しねぇわ、井原さんには」
 
 永田くんはそう教えてくれたあと、ふうっと息を吐いて黙って窓の向こうへと視線を向けた。
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