相談室のきみと、秘密の時間
もしかしたら、この場所は私の特別になるかもしれない。
そんな予感がした。

まるで吸い寄せられるようにして、でもまだ震える手を何とか抑えながらノックをしたあとに、ノブに手をかけついに扉を開いた。
どこか遠くではヒグラシが寂しそうに鳴いているのが聞こえた。

「失礼します」
「どうぞ」

そこには20代前半くらいだろうか、相談室の先生なはずなのにこの学校で一番若く見えるような男の先生がいた。彼は黒髪で細身の体にしっかりとした黒のスーツを着て、メガネをかけていた。

そしてまるで透明な膜に覆われたようにその人のまわりだけ不思議と違う世界の空気をまとっていて、同じ部屋にいるのに、先生だけはものすごく遠い場所にいるようなそんな人だった。

その人は私に気がつくと、かけているメガネをクイと持ち上げながら、気恥しそうに微笑んだ。

「あの、ここは相談室ですよね......あなたは先生ですか?」
「一応そうだよ。僕は村越(むらこし)というんだけど、先生と呼ばれるのは好きじゃないからさ。何でも適当に呼んで。君は?」
「ええとあの、高遠彩葉(たかとういろは)と言います。今1年です」
「高遠彩葉さん。まあまあ座って」
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