私たちの恋風は、春を告げる
あまり顔色がいいとは言えないその子の頭を見て、私は「あ…」と思った。
髪のない頭を覆うように、ニットの帽子をかぶっていた。
「……お姉ちゃん、今日からここにいるの?」
「……え?うん、まあ抗がん剤のお試し入院、みたいな感じかな」
少し恥ずかしそうに、入院着を握ってこちらを見つめている。
私は体を起こした。
「お姉ちゃんも抗がん剤してるんだ!じゃあ希海(のぞみ)と同じなんだね」
希海、そう自分を呼んだその子は子どもらしく、無邪気な声を響かせる。