野いちご源氏物語 〇四 夕顔(ゆうがお)
 夕顔(ゆうがお)(きみ)四十九日(しじゅうくにち)法要(ほうよう)が行われた。どなたの法要かも明らかにしないひそかな儀式(ぎしき)だったけれど、源氏の君は丁寧なご準備をなさった。
 お(そな)(もの)のなかに女性用の(はかま)がある。夕顔の君を思い出しながら特別にお作らせになった物だった。
「袴の(ひも)は結んでおこう。来世(らいせ)で私がほどくまで、そのままにしておいてくれるか」
 女君(おんなぎみ)(たましい)に語りかけなさる。亡くなって四十九日までは、魂はこの世に(ただよ)っているという。
<今日の法要が済んだら、あの人の魂はどこへ行くのだろう。どうか幸せな場所へ向かってほしい>
 そう念じながら、源氏の君はお(きょう)をお読みになる。
 頭中将(とうのちゅうじょう)にお会いになるたびに後ろめたくてお胸がどきどきする。夕顔の君は亡くなったけれど、頭中将のお子は都のさびれたところで育てられている。それを教えたい。しかし教えれば頭中将から責められそうで、打ち明けられずにいらっしゃった。
< 17 / 21 >

この作品をシェア

pagetop