君のいないクリスマス
弥生が、最期の遺してくれた言葉には続きがあった。


『だから・・・あなたは・・・これからは、藤堂さんとお幸せに・・・。』


弥生は、七瀬が俺を想う気持ちを知っていた。あの言葉に、嘘はないと俺も思っている。俺は七瀬が嫌いじゃない、いやむしろ大好きだ。俺の人生の中でも、五本の指に入るくらい、大切な存在であることは間違いない。だけど、「じゃ、お言葉に甘えて」と簡単には言えないんだ・・・。


「『大切なものを失った後は、どんなに似たものも、代われはしない。』何かの本で、そんな言葉を読んだことがあるけど、今の大和の心境そのものだよね。」


「・・・。」


「私は、大和を想う気持ちで、とうとう佐倉さんに勝てなかった。そんな佐倉さんがいなくなって、まだたったの1年。忘れられるわけない、吹っ切れるわけないよ。死んじゃった人をいつまでも引き摺っててもしょうがないなんて、ドライなことを言える人は、たぶんその人を本気で愛してなかったんだよ。だから、私は絶対に佐倉さんの代わりにはなれない。そんなことは百も承知。でも、はっきり言って、なりたくもないの。」


「七瀬・・・。」


「だって、私は私だから。藤堂七瀬だから。佐倉さんみたいにお淑やかでも、可愛くもない。私以外にあなたを好きになる人なんかいるわけないって、自惚れてた傲慢な女。だけど、佐倉さんには及ばなくても、あなたを想い続けていたことは間違いないよ。」


「会社の御曹司に落ちかけたのに?」


少し揶揄うように言ってやると


「それは・・・ごめんなさい。」


シュンとしてしまうから


「冗談だよ。七瀬の気持ち、嬉しいと思ってる。」


とフォロ-したあと


「それは俺にとって、絶対に迷惑なんかじゃない。だけど今は・・・。」


正直な思いを告げると


「いいよ、それで。大和が迷惑じゃないって言ってくれるなら、私は待つから。」


七瀬は言い切った。


「七瀬・・・。」


「でも、これまでは、あんまりガツガツは行かないようにしてたけど、これからもう、大人しくはしてないから。そのつもりでいて。それが嫌ならはっきり言ってくれればいいし。とにかくさすがに、お婆さんになるまでは待てないし。」


「わかった。」


「よし、じゃ帰ろう。とりあえず、手をつないで。」


「それはまだダメ。今日はクリスマス、恋人の聖夜・・・だから。」


「ブ-、ケチ。」


そう言って膨れた七瀬を見て、思わず笑ってしまった俺は


(こんな俺たちを、弥生は空から、微笑ましく見守ってくれてるのかな?そうだといいけど・・・。)


ふとそんなことを思っていた。



END
< 6 / 6 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:6

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
marumori/著

総文字数/183,744

恋愛(オフィスラブ)178ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
突然、親からお見合いを強要された私は、とっさにウソを吐いた。 「結婚を見据えて、お付き合いしている人がいる」と。 その結果、苦し紛れのウソをマコトに、いやマコトに見せなくてはならなくなり 思い悩んでいた私に、救世主が現れた。 そして始まった偽装同居生活。私のウソから始まったこの関係を いつしか、私はホンモノにしたいと思うようになった。なのに、その思いを告げる寸前で 彼は私の前から姿を消した。 それから時は流れ、私は再び、彼と出会うことになった。 でも彼は言った。 「あの頃の俺は、本当の俺じゃないから。」 結局、何がウソで、何がホンモノなんだろう・・・? 偽りから始まった関係は、ホンモノにはやっぱりならないのかな・・・? --------------------------- 菱見 凪咲(28) (株)AOYAMA 受付嬢・派遣社員 × 新城 裕(28) (株)AOYAMA 業務改善プロジェクトリーダ-・御曹司 -----------------------------
Restart~あなたが好きだから~
marumori/著

総文字数/216,266

恋愛(純愛)213ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
藤堂七瀬は「恋愛に興味がない」26歳 仕事に厳しく、上司に臆せず、部下に嫌われることも 厭わずに。しかしそんな彼女に突然降りかかった パワハラ告発。 異動先で、七瀬を待ち受けていたのは 「お前には、俺のパートナ-兼バディになってもらう。」 と言い放つ御曹司副社長。 動揺を隠せない七瀬の、しかし 胸の内には・・・。 ☆この物語の続編にあたる  短編「君のいないクリスマス」  を公開いたしました。 よろしければ、そちらもご覧くださいませ。☆
Loves  only  you
marumori/著

総文字数/138,313

恋愛(純愛)136ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「人間は概ね、自己の欲望の為に人を裏切る。それは特に女において、顕著な特徴であり、ゆえに俺は女という生き物を、全く信用 していない。」 「はぁ・・・?」 『やり手』という触れ込みでやって来た上司は、こんなトンデモ理論を真顔で言い放つ、本当に とんでもない人物だった・・・。 ----------------------------  杉浦 友紀(26) 「本当に悪い人なんて、 この世の中に1人もいない。」 そう教えられて育った真っすぐ な部下 ×  滝 雅也(32) 「人を信頼することはあっても 絶対に信用はしない。」 が信条の冷徹な上司 ----------------------------          

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop