課長はブラックサンタ……だったはずなのに
「はい、大丈夫です」
「良かった。お前は救世主、我が社のキリストだ! いや、女性だからマリアというべきか?」

「課長はさしずめブラックサンタですね」
「なんだそれは」

「嬉しくないプレゼントをくれるサンタですよ。臓物とか鉄とか。普通は悪い子のところに現れるので、善良な私の前に現れるとか、もはや悪魔ですね」
「悪魔かよ」
 課長は苦笑する。

「だって、彼女が断るのわかってて残業頼みましたよねえ。隣にいた私に聞かせて、私がやりますよって言うの待ちでしたよね」
「そんな小細工はしないよ」
 にやりと笑う姿が、もう肯定しているようにしか見えない。

「課長って策士」
 残業を断った彼女が苦笑する。

「資料をメールで送るから、まとめるの頼むな」
「はーい」



 クリスマスイブともなるとさっさと帰る人が大半で、フロアにはすぐに私と課長の二人きりになった。
 暖房が静かに稼働するその部屋に、キーボードを打つ音とマウスをクリックする音だけが響く。

 残業の内容は、明日のプレゼンで使う資料のデータの編集だった。
 なるべく新しいデータでやりたいからと、急遽の差し替えが決まったという。量は多いが、作業自体は単純だ。
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