First Last Love
わたしは目の前の弁護士さんではなく、隣にいる健司にばかり意識がいってしまって、保険金がまとまって入る、ということ以外はほぼスルーしてしまっている。
弁護士さんの名前すら覚えていない。
おそらく健司は額を知っていたんだろう。
それでもアメリカは何もかもが高額だから、少しでも多く叔父から慰謝料を取っておいた方がいいと、昨日わざわざ助言してくれたのだ。
そしてこれだけの金額が入るから、もう自分はいらないと肩の荷が降りたんだろうか。
あの日の言葉は、一度抱いてしまったから、責任から出たものなのかな。
健司の態度を見ていると、全てが自分に都合のいい夢だったんじゃないかとさえ思える。
その後、話が終わると、健司は率先して顧問弁護士さんを送る、と、彼をエレベーターに案内しはじめた。
こんな遅い時間だから少しでも早く帰宅してもらおう、との配慮だろう……けど。
「あーあー。こういう逃げ腰のあいつって、長い付き合いで初めて見るから新鮮だよ。恋愛は人を強くも弱くもするよね」
一ノ瀬社長が口を開いた。
あいつ、って健司のことだよね?
応接で、顧問弁護士さんを見送った態勢でつっ立ったまま、社長は呆れ声を出した。
それからソファにどかっと座り、残っているカプチーノの入ったコーヒーカップを取り上げる。