クリスマスには甘い予約を
「彼ならきっとお誘いされまくりですよねえ」
 後輩がちらりと見る先にはわが社のエース営業の鈴橋くんがいる。仕事は優秀で部長のお気に入り、出世間違いなしと言われている。

 彼は私の同期で、入社式では隣の席になった。
 そのときに連絡先を交換したけれど、仕事でたまに確認のメッセージが来る以外は連絡したことなんてない。
 会社では同じフロアだから軽口を叩く程度には仲がいいけど、プライベートではなにもない。

 彼は仕事熱心で誰にでも優しくて、だから私にも優しくて……。
 気がつけば彼に恋をしていた。

 だけどモテモテの彼に私が相手にされるわけもないと思ったから、ずっと片想いのまま、心に秘めていた。
 せっかく仲良く過ごせているのだから、この距離感を壊したくなかった。




 そろそろお昼休みという時間、私は仕事にキリを付けて、うーんと伸びをした。
「お疲れ」
 外回りから戻ってきた鈴橋くんに声をかけられ、私は慌てて姿勢を戻した。なんだかかっこ悪いところ見られちゃった。

「これもらったからやる」
 鈴橋くんはまだ温かい缶コーヒーを私にくれた。

「いいの?」
「俺、喉乾いてないし」
「ありがと」
 私はさっそく缶を開けて一口飲む。

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