不器用なわたしたちの恋の糸、結んでくれたのは不思議なもふもふたちでした
『ん? ……この匂いは……』

 真剣な顔で、彼は左右を見渡す。

『おまえたちも来てたのか。まったく、しょうがないな』

『そう言うお主も同じようなものであろ。しかも王まで連れてくるとはのう』

 何もない虚空から、スリジエの声が返ってくる。

『トレも来た。ちょっと見るだけならいい? 見つからなければいい』

 もさもさと茂る植込みの中から、トレの声がした。ネージュはさらに鼻を動かして何かを探っているようだったが、やがてぼそりとつぶやいた。

『……なんだかんだで、幻獣が全員いるな。まったく……』

 彼は小さくため息をついて、それから周囲に呼びかける。

『みんな、のぞきはこれくらいにして離れに行こう。せっかく王がここまで来たんだ、おれたちの家を見せてやろうじゃないか』

 その言葉に、あちこちから小さな同意の声が上がる。その中には、王の声もあった。

 ヴィンセントたちに見つからないように遠回りしながら離れに向かう王と幻獣たち。それを先導するネージュが、ふと小さく笑った。

『いつの間にか離れに王が来ていたと知ったら、あいつらどんな顔をするだろうな』

 驚いて、困って、もしかしたら叱ってくるかもしれない。それもまた面白いと、ネージュは感じていた。

 ヴィンセントと出会い、彼の近くに住むようになって。日々彼の話を聞くようになり、やがてエリカがやってきて。ネージュはそんな変化の数々を、心から楽しんでいた。

『長い時を生きてきたおれが、こうも長く人のそばにいることになるとは思わなかった』

『それだけ、あやつのそばは居心地がいいということであろうな。……わらわも、その点については同意じゃ』

『トレも。たぶんもっとずっと、ここにいる』

 スリジエとトレが、そっと彼の独り言に答えた。ネージュは晴れ晴れとした笑みを浮かべ、二人にうなずきかけた。

『まあ、あいつらはかなり世話が焼けるからな。おれたちがついていてやらないと、どうしようもない』

 そうして、彼らは軽やかに駆けていった。明るい笑い声を上げながら、彼らの家に向かって。
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