不器用なわたしたちの恋の糸、結んでくれたのは不思議なもふもふたちでした
 そうして、ネージュさんたちにまた花畑に連れてきてもらった。久しぶりに訪れたそこは、少し姿が変わっていた。

 あちこちに背の高い草むらができているし、咲いている花も春先のものより大きくて色鮮やかだ。夏が近づいている、そんな雰囲気だった。

 わたしとヴィンセント様はそこの一角、背の低い草が生えている辺りに腰を下ろし、のんびりと話していた。

 ちなみにネージュさんとスリジエさんは、意味ありげな含み笑いを残してさっさと散歩に出てしまった。

 屋敷でお喋りするのも楽しいけれど、こうやって心地良い風を感じながら話すのもとても楽しい。というか、ヴィンセント様と一緒ならどこだって楽しいのかも。

 やがて話が途切れ、ゆったりとした沈黙が訪れる。ヴィンセント様は空を見つめ、静かにつぶやいた。

「……思えば、俺に家族ができたのは久しぶりだな」

 小首をかしげて、じっと言葉の続きを待つ。ヴィンセント様が、わたしのことを家族だと言ってくれた、そんな喜びにひたりながら。

「前にも話したと思うが、俺は父親の顔を知らない。そして母とは、十三の年に死に別れた。俺が今二十七だから……ああ、一人で生きてきた時間のほうが長いのか」

 その言葉に、息をのんだ。十四年。そんなにも長い時間を、ヴィンセント様は一人で生きてきたなんて。

 そろそろとヴィンセント様に近づいて、彼の大きな手を取る。その皮の硬さに、彼が過ごしてきた過酷な年月が表れているような気がした。

「これからは、ずっと一緒です。一人ではありませんから」

「……そうか」

 それきりわたしたちは、ただ黙っていていた。そよ風が草原を渡る音、どこかで小鳥が鳴いている声、そんなものを聞きながら。

 とても安らぐ、けれど同時に妙に落ち着かない時間だった。嫌な感じではない。ただ胸の辺りがくすぐったいような、そんな気分なのだ。

 そろそろ何か、別の話題を探したほうがいいのかなあ。そう思ったまさにその時、すぐ近くで素敵なものを見つけた。

 わたしたちのすぐそばに、クローバーの一群れが広がっていた。その中に一本だけ、四つ葉があったのだ。

「あ、四つ葉のクローバーですよ、ヴィンセント様」

「本当だな。幸運を運ぶのだったか。……摘んで帰ったらどうだ」

「はい、そうします」

 笑顔でそんなことを話し合って、四つ葉のクローバーに手を伸ばしたその時。
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