初めての恋のお相手は
「恋人のフリも
頃合いを見て終わりにしようと思います」



もともと、最初から
祠堂さんの家を出る事は決めていた事だし

送り迎えも含めて
ずっと、祠堂さんに甘え続けるわけにもいかない。

祠堂さんには祠堂さんの生活がある。



「……だけど、今は…もう少しだけ」


「もう少しだけ、祠堂さんと
この関係に浸っていたい」



初恋を味わい尽くして
良い思い出になるように
もう少しだけ、祠堂さんと一緒に過ごしたい。



「……楸ちゃんは、分かってないなぁ」



私の言葉に黙って耳を傾けていた
こゆさんが、やれやれと肩を竦める。



「祠堂さんは、ああ見えて、わがままだから」


「一度、欲しいと思ったら
絶対に手に入れる人だから」


「祠堂さんが楸ちゃんに恋をしているなら」


「好きだと思っているなら」



「絶対、楸ちゃんを逃がさない」



「…」



こゆさんのその言葉に


困る自分もいれば


不覚にも


喜んでいる自分もいて


ままならない感情に翻弄される。



「祠堂さんと楸ちゃん
勝つのはどっちか、楽しみだね」



揺れる私を眺めながら
こゆさんは、少し意地悪な笑顔を浮かべた。
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