糖度8%
思い返してみれば今までの人生、私の辞書に「一生懸命」なんてなくて
ギイィ………………
・
愛華「……わぁ、」
楽しけりゃいいでしょ?そんなスタンスで生きてきた。
まだ人がまばらにいる教室を一人で抜け出し、屋上へと続く階段を恐る恐る上ると年季が入り錆びれたドアが現れる。
ひんやりするドアノブを引くと、視界に広がったのは青空とぽつぽつと浮かぶ綿雲。
初めて入った、ていうか入れるんだ……屋上って。
鼠色のコンクリートがいっぱいに広がる地面、見上げれば雲一つない青空
新品の制服が風になびいて揺れる、それすら今の私には心地よくて
愛華「………気持ちいー!」
大きく伸びをして息を吐く。
なんか……高校生になったって気がする!
.......................................................
.......................................................
自分で言うのもなんだけど、昔から器用な方だった。
勉強も部活も、友達付き合いも恋愛も
別に特別頑張らなくても結果はついてきて
一生懸命にならなくても満足いく結果にはなってきた。
打ち込まなくても勉強はできたし
必死にならなくても、部活のパートリーダーは務められた。
気の合う友達とそれなりに過ごして
かっこいいなって思った人と、それなりに付き合って
頑張るとか、やり切るとか、一生懸命とか
そういう言葉……一生縁がないって、私には関係ないって思ってた。
でもね……変わっちゃうんだ、そんな私の人生が、
愛華「…………ん?」
たった一人、あなたと出会ったことで
愛華「……え、」
変わっちゃうんだ。
奥にベンチが見えた、そしてそこに……足が見える。
え、なに……人?
そう思って近づく、興味本位っていうか…心配が半分。
よく見るとその人はベンチに寝転がってるじゃないか
……こんな日に、こんなところに、誰がいるの?
一年生が初日から屋上なんてくるわけないし(ブーメラン)
上級生は下で部活勧誘してるんでしょ?
愛華「…………………ゴクッ」
思わず息をのむ。
恐る恐る近づいて、数mまで距離を縮めると
確認できたのは……その人が着ているズボン。
……うちの制服だ。
そしてベンチに横たわってる姿を上から覗き込むように確認。
………その姿は、
愛華「……………えっ、」
上まできっちり、うちの制服。ネクタイ姿の男の人だった。
だけど「サッカー部」と書かれた数枚のビラと腕で顔を隠してるその人
でもスウスウとわかるくらい寝息を立ててそこにいた。
え……寝てる?なにこれ、何なのこれ。
愛華「……………………」
どうしようかと思った、その瞬間。
ビュ~…
愛華「あっ!!」
って、スカートがめくれるくらい強い春風が吹いて
私は咄嗟にそれを抑えた。
そしたらその人の顔に載ってたビラが、サアー…って空中を舞って飛んでいって
あっ!と思って見てた。数十枚もある紙が桜の花びらみたいにヒラヒラ飛んでったと思ったら
・
「……………だれだよ、」
下の方から聞こえてきたのは、低い声。
そして私は、ハッとした。
いつの間にか顔があらわになってたその人にも
私たちの頭上でハラハラと宙を舞ってる何十枚の紙にも
全部がスローモーションになったみたいに、私にはゆっくりと感じられて。
ゆっくり起き上がったその人
スカートを抑えてる変な格好のまま私は何にも言えずその人を見る。
「…………あんた、誰」
…………その人の顔を見た瞬間
心臓が、聞いたことのない音を出した。
愛華「…………っ!!!!」
感じたんだ、今まで一度も感じたことのない感覚を。
私が今見ているもの、見ていたもの全部どうでもよくなって
そこにいるその人にしか…目がいかなくなった。
かっこいいなんてもんじゃない、整ってるどころじゃない。
愛華「………………………」
春風が、大きく吹き荒れたその瞬間
あなたの顔を見た瞬間、声を聴いた瞬間、感じてしまった。
…………ドクン、って鳴った音を
恋に落ちた、その音を。
ガチャッ
「あー!!!翔平いた!!」
愛華「っ!!!」
時が止まった感覚がして、その場にじーっと立ち止まっていると後ろからちょっと慌てた声が聞こえた。
ビックリして振り返ると、そこには全然知らない人がいて
「翔平」って名前を呼んでこっちにやってくる。
「……んだよ拓人かよ」
拓人「ちょっと!こんなとこでサボってないでほら、ビラ配りに行くよ!」
「めんどくせー……てか俺紙持ってないし」
拓人「え?持ってないってじゃあ……ああぁ!!!なんてことを!」
私なんてお構いなしに話がポンポン進んでいく
その人は私に気づいてないのか、ヒラヒラ宙に浮かんでる紙を見て頭を抱えて。
拓人「こんなことしたら奈央になんて言われるか…!」
って、また知らない人の名前を出す。
拓人「ん?」
愛華「あっ…!」
拓人「誰?翔平知り合い?」
頭を抱えてどうしようと言ってる後から入ってきたその人は
やっと私の存在に気づいて、わかりやすく「誰?」って顔を浮かべる。
私も、誰?って感じだし
っていうかこの状況に驚きが隠せないんだけども…!
だって入学式に屋上なんて誰も来ないと思ってたのに
なんでこんな、こんなことに!
「翔平」と呼ばれるその人は、ベンチの背もたれに腕をのっけて私を横目で見る。
「………知らね、」
拓人「え、そうなの?ってちょっと待ってってば!」
それだけ言って立ち上がると、もう一人の人を置いてドアの方へ歩いて行く
そしてあっという間に……その人は私の真横を通り過ぎていった、
一瞬だけ、一瞬だけの出来事。
ふわりと香った険しい顔をしてたその人からは想像もできないような甘い匂い
………相変わらず心臓は、波を打つみたいに規則正しく脈を打つ。
ドキドキドキドキ、ドキドキドキドキ……
後ろから二人の喋る声が聞こえてくる
床にはさっき宙に舞っていたビラが落ちていて
ーーー ……………あんた、誰
ほんの数分前のことを思い出せば……心臓はドキドキいってた、今もまだ。
愛華「……………あ、あのっ!!」
出会いは突然
慣れない感情も、恋の始まりも……前触れなく私に訪れた。
・
衝動的に呼び止めた、その人は体は前のまま顔だけ私の方へ向ける。
愛華「………………」
拓人「どうしたの?」
愛華「……ひ、」
拓人「あ、もしかしてマネージャー興味」
・
愛華「…一目惚れしました!今、あなたに!!!」
・
今までの人生、全部なあなあに過ごしてきて
何かを全力でとか、打ち込んでとか……そういうの、一切なかった。
そんな私の人生が変わったのは、多分きっと間違いなく
拓人「一目惚れって……え、翔平にぃ!?」
出会ったからだ
一生懸命になりたいって思ったこの恋に、あなたに
「……………………は?」
……出会って、しまったからだ。
ギイィ………………
・
愛華「……わぁ、」
楽しけりゃいいでしょ?そんなスタンスで生きてきた。
まだ人がまばらにいる教室を一人で抜け出し、屋上へと続く階段を恐る恐る上ると年季が入り錆びれたドアが現れる。
ひんやりするドアノブを引くと、視界に広がったのは青空とぽつぽつと浮かぶ綿雲。
初めて入った、ていうか入れるんだ……屋上って。
鼠色のコンクリートがいっぱいに広がる地面、見上げれば雲一つない青空
新品の制服が風になびいて揺れる、それすら今の私には心地よくて
愛華「………気持ちいー!」
大きく伸びをして息を吐く。
なんか……高校生になったって気がする!
.......................................................
.......................................................
自分で言うのもなんだけど、昔から器用な方だった。
勉強も部活も、友達付き合いも恋愛も
別に特別頑張らなくても結果はついてきて
一生懸命にならなくても満足いく結果にはなってきた。
打ち込まなくても勉強はできたし
必死にならなくても、部活のパートリーダーは務められた。
気の合う友達とそれなりに過ごして
かっこいいなって思った人と、それなりに付き合って
頑張るとか、やり切るとか、一生懸命とか
そういう言葉……一生縁がないって、私には関係ないって思ってた。
でもね……変わっちゃうんだ、そんな私の人生が、
愛華「…………ん?」
たった一人、あなたと出会ったことで
愛華「……え、」
変わっちゃうんだ。
奥にベンチが見えた、そしてそこに……足が見える。
え、なに……人?
そう思って近づく、興味本位っていうか…心配が半分。
よく見るとその人はベンチに寝転がってるじゃないか
……こんな日に、こんなところに、誰がいるの?
一年生が初日から屋上なんてくるわけないし(ブーメラン)
上級生は下で部活勧誘してるんでしょ?
愛華「…………………ゴクッ」
思わず息をのむ。
恐る恐る近づいて、数mまで距離を縮めると
確認できたのは……その人が着ているズボン。
……うちの制服だ。
そしてベンチに横たわってる姿を上から覗き込むように確認。
………その姿は、
愛華「……………えっ、」
上まできっちり、うちの制服。ネクタイ姿の男の人だった。
だけど「サッカー部」と書かれた数枚のビラと腕で顔を隠してるその人
でもスウスウとわかるくらい寝息を立ててそこにいた。
え……寝てる?なにこれ、何なのこれ。
愛華「……………………」
どうしようかと思った、その瞬間。
ビュ~…
愛華「あっ!!」
って、スカートがめくれるくらい強い春風が吹いて
私は咄嗟にそれを抑えた。
そしたらその人の顔に載ってたビラが、サアー…って空中を舞って飛んでいって
あっ!と思って見てた。数十枚もある紙が桜の花びらみたいにヒラヒラ飛んでったと思ったら
・
「……………だれだよ、」
下の方から聞こえてきたのは、低い声。
そして私は、ハッとした。
いつの間にか顔があらわになってたその人にも
私たちの頭上でハラハラと宙を舞ってる何十枚の紙にも
全部がスローモーションになったみたいに、私にはゆっくりと感じられて。
ゆっくり起き上がったその人
スカートを抑えてる変な格好のまま私は何にも言えずその人を見る。
「…………あんた、誰」
…………その人の顔を見た瞬間
心臓が、聞いたことのない音を出した。
愛華「…………っ!!!!」
感じたんだ、今まで一度も感じたことのない感覚を。
私が今見ているもの、見ていたもの全部どうでもよくなって
そこにいるその人にしか…目がいかなくなった。
かっこいいなんてもんじゃない、整ってるどころじゃない。
愛華「………………………」
春風が、大きく吹き荒れたその瞬間
あなたの顔を見た瞬間、声を聴いた瞬間、感じてしまった。
…………ドクン、って鳴った音を
恋に落ちた、その音を。
ガチャッ
「あー!!!翔平いた!!」
愛華「っ!!!」
時が止まった感覚がして、その場にじーっと立ち止まっていると後ろからちょっと慌てた声が聞こえた。
ビックリして振り返ると、そこには全然知らない人がいて
「翔平」って名前を呼んでこっちにやってくる。
「……んだよ拓人かよ」
拓人「ちょっと!こんなとこでサボってないでほら、ビラ配りに行くよ!」
「めんどくせー……てか俺紙持ってないし」
拓人「え?持ってないってじゃあ……ああぁ!!!なんてことを!」
私なんてお構いなしに話がポンポン進んでいく
その人は私に気づいてないのか、ヒラヒラ宙に浮かんでる紙を見て頭を抱えて。
拓人「こんなことしたら奈央になんて言われるか…!」
って、また知らない人の名前を出す。
拓人「ん?」
愛華「あっ…!」
拓人「誰?翔平知り合い?」
頭を抱えてどうしようと言ってる後から入ってきたその人は
やっと私の存在に気づいて、わかりやすく「誰?」って顔を浮かべる。
私も、誰?って感じだし
っていうかこの状況に驚きが隠せないんだけども…!
だって入学式に屋上なんて誰も来ないと思ってたのに
なんでこんな、こんなことに!
「翔平」と呼ばれるその人は、ベンチの背もたれに腕をのっけて私を横目で見る。
「………知らね、」
拓人「え、そうなの?ってちょっと待ってってば!」
それだけ言って立ち上がると、もう一人の人を置いてドアの方へ歩いて行く
そしてあっという間に……その人は私の真横を通り過ぎていった、
一瞬だけ、一瞬だけの出来事。
ふわりと香った険しい顔をしてたその人からは想像もできないような甘い匂い
………相変わらず心臓は、波を打つみたいに規則正しく脈を打つ。
ドキドキドキドキ、ドキドキドキドキ……
後ろから二人の喋る声が聞こえてくる
床にはさっき宙に舞っていたビラが落ちていて
ーーー ……………あんた、誰
ほんの数分前のことを思い出せば……心臓はドキドキいってた、今もまだ。
愛華「……………あ、あのっ!!」
出会いは突然
慣れない感情も、恋の始まりも……前触れなく私に訪れた。
・
衝動的に呼び止めた、その人は体は前のまま顔だけ私の方へ向ける。
愛華「………………」
拓人「どうしたの?」
愛華「……ひ、」
拓人「あ、もしかしてマネージャー興味」
・
愛華「…一目惚れしました!今、あなたに!!!」
・
今までの人生、全部なあなあに過ごしてきて
何かを全力でとか、打ち込んでとか……そういうの、一切なかった。
そんな私の人生が変わったのは、多分きっと間違いなく
拓人「一目惚れって……え、翔平にぃ!?」
出会ったからだ
一生懸命になりたいって思ったこの恋に、あなたに
「……………………は?」
……出会って、しまったからだ。