刹那に触れる兎


「ねぇ、レミさん。今日は最後までさせてくれない?」

常連で20代半ばの北島くんがわたしの上に覆い被さりながら言う。

「ダーメ。うちの店は本番禁止なの。知ってるでしょ?」
「個室だから、してもバレないじゃん。」
「もしバレたら?わたしクビで、もう会えなくなっちゃうよ?」

北島くんは溜め息をつき、「わかったよ。」と不満そうな表情を浮かべると、わたしの乳房を愛撫し始めた。

ここは35〜50歳までの"お姉さん"専門の風俗店。

基本的には20〜30代のお客さんが多い店だ。

そして、わたしはこの店の中では、売上が一番高く、いわゆるナンバー1の風俗嬢。

毎日引っ切り無しに、わたしの部屋にはお客が入って来ては性行為を求め、相手をしてあげるが店のルール上、本番は無し。

それから、わたしに至っては唇へのキスも無し。

それ以外でお客を満たし、キスと本番をねだってくるお客も少なくないが、断り続けてもわたしに会いに来る。

わたしは北島くんに愛撫されながら、北島くんの下半身を滑らかな手つきで撫であげる。

北島くんは吐息を漏らしながら、「レミさんのその手つきエロすぎ。」と唇にキスをしてこようとした。

しかし、わたしは右手の人差し指で北島くんの唇を阻止する。

「ダーメ。」

北島くんは「やっぱりダメか。」と諦めたように笑うと、わたしの額にキスをした。

すると、時間終了のベルが鳴る。

北島くんは「え、もう終わり?延長なし?」と言った。

「次のお客さんが待ってるの。ごめんね?」

わたしがそう言うと、北島くんは仕方なさそうに服を着て、「また会いに来るね。」と言うと、部屋から出て行った。

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