刹那に触れる兎
わたしは疲れ果て、少しベッドから動けずに休憩したあと、シルクのガウン一枚を羽織り、一服をする為にベランダに出た。
その間、諏訪さんはわたしが濡らしたベッドシーツを取り替え、それからベランダへやって来る。
諏訪さんはわたしを後ろから抱きしめると、はだけたわたしのガウンを整え、胸が見えないように隠した。
「ねぇ、諏訪さんって、セックスのあと何で必ず"ありがとうございます"って言うの?」
「セックスは、莉子さんが居てこそ出来る行為です。それから、僕の癒しにもなっています。お礼を言うのは、当たり前のことじゃないですか。」
「セックスをして、お礼を言われたのなんて初めて。やっぱり諏訪さんって変わってる。」
「ありがとうございます。」
わたしは煙草を咥え、深く吸い込む。
すると、諏訪さんは「莉子さんって、煙草似合いませんよね。まだ吸い始めたばかりなんじゃないですか?」と言ってきた。
わたしは深く吸い込んだ煙をゆっくり吐き出すと、「何で分かったの?」と訊いた。
「何と無くです。」
「また弁護士の勘ってやつ?」
「そうですね。」
わたしは笑うと、「吸い始めたのは、風俗嬢になってから。弁護士の勘って、当たるのね。」と言った。
「煙草は身体に悪いですよ。」
「分かってる。でも、、、わたしは、この生き方を選んだから。」
そう言うわたしに諏訪さんは、「僕が変えてみせます。」と言い、わたしの首筋に顔を埋め、ギュッと抱きしめたのだった。