刹那に触れる兎
諏訪さんの自宅は、お店から車で15分程の場所にあり、分かってはいた事だが、いかにも家賃が高そうな立派なマンションに住んでいた。
わたしは駐車場に停めた車から降りると、マンションを見上げ「さすが、弁護士さんが住むマンションは違うわね。」と言った。
「レミさんこそ、良いマンションに住んでるんじゃないですか?」
「わたしは、寝に帰るだけの家だから。」
そんな話をしながら、正面玄関の自動ドアを潜り、エントランスでカードキーを使いドアを開かせると、エレベーターで10階へと向かった。
諏訪さんの自宅は、一人暮らしなのに3LDKで広いリビングには大きなL字型のソファーにガラスのテーブルが置いてあった。
大きなテレビ台には、何インチなのか分からない程の画面の大きなテレビが置いてあり、部屋の隅には大きな観葉植物や背の高いスタンドライトがあり、モデルルームのような部屋だった。
「レミさん、何か飲みますか?」
そう訊く諏訪さんのそばで、トレンチコートを脱ぎ、服を脱いでいくわたし。
「何があるの?」
「ワインかビールか。」
「ワインなら赤がいい。」
「分かりました。」
そう言って、キッチンに向かう諏訪さんは棚からワイングラスを2つ出し、ワインを選んでいく。
わたしは下着を外すと、バッグの中からシルクのガウンを取り出し、それ一枚を羽織った。
「レミさん、家でもそれ一枚なんですか?」
「そう。身体を締め付けられているのが嫌なの。」
わたしはそう言うと、大きなソファーに腰を掛け、足を組んで煙草の箱を取り出した。