冷徹の先にー司と紗奈ー
第3章 - 強さの代償
日が経つにつれ、紗奈はますます強くなることを決意していた。だが、強さを追い求めるその過程で、紗奈は気づき始めていた。冷徹さを求めるあまり、自分の心が少しずつ硬くなっていくことを。
毎日、トレーニングを重ね、周囲の男子たちと戦いながら、紗奈は力をつけていった。しかし、どこかで心の中で、ふとした瞬間に温かい感情が芽生える。それは、司への感情だと、紗奈は気づいていた。
司を超えなければならない、その思いは変わらない。しかし、その思いを持ちながらも、彼に対して抱いている感情に自分自身が戸惑っていた。
ある日の放課後、司が再び紗奈を呼び止めた。
「お前、冷徹さが足りない。」その言葉を耳にした瞬間、紗奈は無意識に少し息を呑んだ。彼の目に、少しだけ期待が込められていることに気づいていた。
「あなたを超えるために、もっと強くならなければ。」紗奈は静かに言った。司は少し黙り込むと、冷徹な目で紗奈を見つめた。
「その通りだ。」司は短く答えると、紗奈に向かって一歩踏み出した。「だが、超えるためには冷徹でなければならない。それを理解しろ。」
その言葉に、紗奈の胸が締め付けられるように感じた。冷徹さを極めることが、本当に自分の望むことなのだろうか。その問いに対する答えが見えないまま、紗奈はただ黙って司を見つめるだけだった。
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