【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです
 たしかに、エミュリアの言うとおりだ。
 結局のところ、わたしはエミュリアの真似をしていると思われてまで、自分の『好き』を押し通すだけの強さが足りなかった。悔しくて苦しくて、見ているだけで辛くなるからと、手放すことを選んでしまった。

 だけど本当は、自分が大好きなものを諦めたくなかった。わたしのほうが先だったって言いたかった。真似しないで――取らないでって言いたかったのに。


「さあ、話はこれでおしまい。皆様、嫌な雰囲気にしてごめんなさいね」

「ちょっと、まだ話は終わってないわ!」

「わたくしには、ウィロウと話すことはなにもないもの。こんな華やかな場で、雰囲気をぶち壊してまで話すことかしら?」

「……っ!」


 エミュリアの言葉に口をつぐむ。彼女の言うとおり、このままここで口論を続ければ、周囲からはわたしが一方的に悪く見えるだろう。
 ものすごく腹が立つし悔しいけど、ここはいったん矛先を収めるべきだ――わたしはグッと拳を握った。


「それにわたくし、嘘は一つも言っていないもの。ああ、間違っても今夜、ゲイル様と踊ろうなんて考えないでよね。手に入れたところで、どうせ捨ててしまうんでしょう? 彼はわたくしと婚約するんだから――」

「俺が君と婚約をすることはないよ、エミュリア嬢」


 そのとき、背後からそんな言葉が聞こえてきた。わたしの大好きな少し掠れた低い声。肩を優しく抱き寄せられて振り返ると、そこにはゲイル様がいた。


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