【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです
 そうこうしているうちに、アシェルの訪れはどんどん増え、気づけば二日おきに顔を合わせるようになっていた。
 公爵というのは領地の経営や王族絡みの仕事など、かなり忙しいらしい。アシェルはまだ若い上、爵位を継いで間もないからなおさらだ。けれど、彼は相当な努力をして時間を作ってくれている。


(アシェル様は素晴らしい男性だわ)


 短い付き合いだが、真面目で誠実な人だということは間違いない。
 それだけに、どうしてダニエルの母親が彼のそばを離れてしまったのか、フィオナには解せなかった。


「――ダニエルが離乳食をはじめたそうだな」

「はい。パンや野菜をすりおろしたものを召し上がってます。現状好き嫌いもなく、よく食べていらっしゃいますよ」


 きっと、仕事の合間にも、使用人たちにダニエルの様子を尋ねているのだろう。質問の内容が少しずつ父親らしくなっていくアシェルの様子が微笑ましく、フィオナは胸が温かくなる。


「――そろそろ、私と一緒に食事ができないだろうか?」


 アシェルはそう言って、ダニエルの手をギュッと握る。


「よかったら君も……」


 アシェルの言葉はそんなふうに続く。それから彼は、フィオナのことをじっと見つめた。ほんのりと頬が赤い。……が、フィオナはそれには気づかず「いい考えです!」と手を叩いて喜んだ。


「ダニエル様はまだ一日に一回しかお食事をなさりませんが、きっとお喜びになりますよ。早速手配をしてもらいましょう」


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