【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです
(アンセルが貴族だったら良かったのになぁ)


 ……なんて、そんなことは考えたって意味がないってわかってる。

 アンセルがわたしの側に仕えてくれているのは彼が平民だからだし、出会い方が違っていたらこんなふうに感じていたかもわからない。多分だけどアンセルを知る時間なんてほとんどないんだろうな。社交界デビューした途端すぐに結婚相手が決まりそうだもん。

 というか、もしも身分が同じだとして、アンセルがわたしを好きになってくれるかはわからない。……今だって、仕えている主人だから親身になってくれてるだけかもしれないし。こんなふうに一々反応して喜んだり切なくなるのは無駄だって、頭ではわかってるのにな。

 結局、馬車に揺られている間中、わたしはアンセルのことを考えていた。


「お嬢様、到着しましたよ」

「うん」


 目の前には我が家に負けずとも劣らない立派なお屋敷。漫画で見たとおりのブレディン様のお屋敷だ。高台にあるためここは水害にはあっていないらしい。


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