【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです
「……ねえ、わたしの気持ちは聞かないの?」

「はい。だって、私と一緒でしょう?」


 チュッと触れるだけの口づけをされ、身体がブワッと熱くなる。

 やっぱり、アンセルにはなにもかもお見通しらしい。ちゃんと隠していたはずなのに。……だって、アンセルと結ばれることはないって思っていたし。だけど――


「うん」


 アンセルの言うとおり。わたしはアンセルのことが好きなんだもん。

 前世を思い出すまでは彼と生きていく想像なんてできなかった。だけど、もしも自分の気持ちに素直になっていいのなら――わたしはアンセルと一緒に生きていきたいと思う。

 これが原作通りの結末なのかはわからない。けれど、ここから先は筋書きのないわたし自身の人生だ。


「私がマヤ様を幸せにします。いつも何度でも、あなたの望む幸せをご覧に入れますよ」


 アンセルが笑う。それはこれまで見たことないような飛び切りの笑顔で。


「アンセル、わたし生きててよかった」


 わたしも彼と一緒になって満面の笑みを浮かべるのだった。
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