【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです
「妻はもう聖女ではありません。国民全員が知っている話ですよ? むしろ、殿下が一番よくご存知なのでは? ――そう殿下にお伝えください」
元部下だったテオから、そんなふうに冷たくあしらわれてしまう。
「くそっ、このままでは埒が明かない。……僕が直接行って交渉しよう。なに、リゼットのことだ。僕に逆らえるはずがない。」
ルロワはそう言って王城を旅立った。けれど、好んで彼に付き従うものなどほとんどいない。王族とは思えないほど最低限の伴を連れた彼は、途中で魔獣の襲撃にあったそうだ。そして、その所在は現在不明となっている――。
「テオ、一体なにを読んでいるの?」
「これ? ……内緒」
テオは微笑みながら、部下からの報告書をパタリと閉じる。
リゼットはルロワのその後について、なにも知らなくていい。彼がリゼットを迎えに来たことも、王都が今どんな状況かも、彼女には関係のないことだ。これからは、不安や葛藤など微塵も抱かず、ただただ幸せになってほしい。知ればきっと、リゼットは彼らを助けたいと思うだろうから。
……と、テオはリゼットがふくれっ面をしていることに気づく。
「どうした、リゼット?」
「隠し事は嫌。教えて? 私は大丈夫だから。だって、なにがあってもテオが幸せにしてくれるもの……でしょう?」
ギュッと腕にすがりつかれ、テオは思わず苦笑を漏らす。
「まったく、俺の妻はわがままだな」
聖女とはとても思えない。けれど、未来永劫変わらずにいてほしいとテオは心から願う。
「そうよ。……ダメなの?」
「いいや。すごく可愛い」
真面目な顔をしてそうこたえるテオに、リゼットは満面の笑みを浮かべるのだった。
元部下だったテオから、そんなふうに冷たくあしらわれてしまう。
「くそっ、このままでは埒が明かない。……僕が直接行って交渉しよう。なに、リゼットのことだ。僕に逆らえるはずがない。」
ルロワはそう言って王城を旅立った。けれど、好んで彼に付き従うものなどほとんどいない。王族とは思えないほど最低限の伴を連れた彼は、途中で魔獣の襲撃にあったそうだ。そして、その所在は現在不明となっている――。
「テオ、一体なにを読んでいるの?」
「これ? ……内緒」
テオは微笑みながら、部下からの報告書をパタリと閉じる。
リゼットはルロワのその後について、なにも知らなくていい。彼がリゼットを迎えに来たことも、王都が今どんな状況かも、彼女には関係のないことだ。これからは、不安や葛藤など微塵も抱かず、ただただ幸せになってほしい。知ればきっと、リゼットは彼らを助けたいと思うだろうから。
……と、テオはリゼットがふくれっ面をしていることに気づく。
「どうした、リゼット?」
「隠し事は嫌。教えて? 私は大丈夫だから。だって、なにがあってもテオが幸せにしてくれるもの……でしょう?」
ギュッと腕にすがりつかれ、テオは思わず苦笑を漏らす。
「まったく、俺の妻はわがままだな」
聖女とはとても思えない。けれど、未来永劫変わらずにいてほしいとテオは心から願う。
「そうよ。……ダメなの?」
「いいや。すごく可愛い」
真面目な顔をしてそうこたえるテオに、リゼットは満面の笑みを浮かべるのだった。


