【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです
「しません。領地を出る際、母からああいったドレスを山程持たされましたが、王都への道すがらすべて寄付をしてきました。そもそも好みじゃありませんし、気の強い私にはああいった服装は似合いませんし」

「それは言えてる」


 ユリウス様の言葉に、私は思わずムッとする。


(だったら聞くなよ!)


 言い返してやろうと思ったそのとき、彼は私の頭をポンと撫でた。


「ちゃんと持ってるじゃん」

「え?」

「『自分』というもの。まあ、半分以上が母親への反発心かもしれないけど、それだって『クラウディア』自身だろう?」


 ……彼はエスパーなんだろうか? 私がなにを考えていたのかお見通しらしい。


「今はまだ、そういう感じでいいんじゃない?」


 そんなことを言い残して、ユリウス様は他の令嬢のもとへと向かった。


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