【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです
(本当は私、ユリウス様のことが好きだったんだな……)


 気づかないようにしていただけで。きっとずっと、彼のことを想っていた。
 もしも私が母の子どもじゃなかったら――もしも彼が王太子じゃなかったら、今とは違う結末を迎えられていただろうか?


 城内に与えられていた部屋に戻り、一人静かに膝を抱える。
 この城とももうすぐお別れだ。あんなに嫌だと思っていたのに、今となっては少しだけ名残惜しい。


「クラウディア」


 外から声をかけられハッとする。ユリウス様の声だ。
 扉を開け、ユリウス様の顔を見れないまま「なんでしょう?」とそう尋ねる。


「少し外を歩かないか?」


***


 ユリウス様と私は無言で庭園を歩いていた。
 こうして二人きりになるのはお茶会の夜が最後。まともに言葉を交わすのだってあれ以来のことだ。


「あの……ありがとうございました。母のこと。かばっていただけて、とても嬉しかったです」


 口にして、深々と礼をする。

 私はユリウス様の気持ちが嬉しかった。願いを叶えてもらえて、彼にあんなふうに言ってもらえて、本当にすごく嬉しかったのだ。
 儀式の最中にお礼を言うことはできなかったし、もうすぐ私は城を去る。今伝えなければ一生伝えられないだろう。


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