【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです
「もちろん、この話は断ってもいい。フィオナの気持ちが一番だからな。けれど、もしかしたらお前の気が晴れるかもしれないと思って……」

「ありがとうございます、お父様」


 お礼を言いながら、フィオナの瞳から涙がこぼれ落ちる。

 誰もフィオナの気持ちを理解なんてできないと思っていた。わかってほしいとも思っていなかった。慰められることも、かといって放って置かれるのも嫌で、もはやどうしようもないと思っていた。

 けれど、このままではいけないことはフィオナ自身が一番わかっていた。どこかで立ち直り、前を向かなければならない、と。


「わたし、行ってみたいです。もちろん、わたしに務まるかはわかりませんが、それでも……」


 フィオナの言葉に、両親がそっと目を細める。ふたりはフィオナを抱きしめると、一緒になって涙を流した。


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