The previous night of the world revolution4~I.D.~
ルリシヤが喋っていたのは、俺には分からない、多分ルティス帝国少数民族の言語だと思う。

何て話していたのか、後で聞いたところによると。

要約すると。

ルリシヤと俺は、生きてシェルドニア王国にいること。

シェルドニア王国の貴族、ヘールシュミット家のアシミムの陰謀で、騙されて連れてこられたこと。

アシミムの目的は、ルレイアを利用して、自分から王位を簒奪した叔父を暗殺することであり。

だから、ルレイアは恐らくヘールシュミット邸にいると思うが、生きているかどうかは分からないこと。

また、『ホワイト・ドリーム号』含め、シェルドニア王国は洗脳国家であり、国民を洗脳して、逆らえないように仕向けていること。

更に、今のところルレイアからの音沙汰はなく、恐らく洗脳のせいで、ルレイアも身動きが取れなくなっているのであろうということ。

俺とルリシヤは現在、ヘールシュミット家の追っ手から逃れ、何とか無事に生活していること。

機を見てルレイアを助けに行くつもりであるが、何処にヘールシュミット家の監視の目が潜んでいるかも分からず、こちらもなかなか身動きが取れていないこと。

可能であれば、遠い異国にいる俺達を支援して欲しいということ。

しかし、俺達がそちらと連絡を取っていることがアシミムにバレたら、何らかの形で妨害される可能性があるので、充分に気をつけて欲しいこと。

巻き込んでしまって申し訳ないということも。

それから、ルヴィアに対しても。

それらを五分で、複数の言語と暗号を組み合わせながら話した。

「…ふぅ。これで大丈夫だろう。あとはルルシー先輩の部下の嫁が、留守電に気づいてくれることを祈るばかりだ」

「…そうだな。ありがとう」

ルリシヤがいなかったら、俺はとっくに冷静さを失って、アシミムに良いように利用されていただろうな。

カジノで逃亡資金を巻き上げてきたのもルリシヤだし。

今は、ルリシヤがカジノで得た資金を元手に、投資で稼いでいるが。

俺一人だったら、絶対に…そんなこと、考えもつかなかっただろう。

…おんぶに抱っこじゃん、俺。

「さて、ルルシー先輩。探知される危険がある以上、長居は無用だ。終電がなくなる前に帰ろう」

「…そうだな」

自分の不甲斐なさ、無力感を嘆いている暇はない。

そんな暇があったら、ルレイアの無事を祈っている方が、余程有意義というものだ。
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