The previous night of the world revolution4~I.D.~
「それから、連絡すると言っても、通話をすることは出来ない。事情を説明している暇はないし、通話履歴がバレたら、彼女に迷惑をかける可能性が高くなる」

「…じゃあ、音声メッセージを送るだけか?」

「そうなるな。ようは留守電を入れるだけだ」

留守電入ってること、気づいてくれれば良いんだがな。ルヴィア嫁。

そこまで鈍くはないか。

いや、でも知らない番号から来た音声メッセージなんて、聞かずに削除するタイプだったら。

その場合は不味いな。

多分…大丈夫だとは思うが…。

「メッセージを送れる時間は、精々五分程度…。その間に要点をまとめて話さないとな」

…ルリシヤのことだから、原稿に起こすまでもなく秒単位で文章考えてるだろう。

だから、そこに水を差したくはないが…。

「…ルヴィアに、嫁巻き込んで済まん、って付け加えてくれないか。頼む」

「分かった。じゃあ、全体的に0.5秒くらい早めに喋ろう。電話にしてはちょっと早口だが、まぁ大丈夫だろう」

「ルティス語で話すのか?何か…難しい言語で話した方が」

「勿論そのつもりだ。色んな国の少数言語を、ついでに即席で少々暗号を交えながら話す。アイズ先輩なら、解読してくれるだろう」

…さすがである。

これなら、ヘールシュミット家の力をもってしても、そう簡単には解読出来まい。

「それと…念の為、これも使おう」

何処から調達したのか、ルリシヤはパーティーグッズでよく見る、ヘリウムガスのスプレー缶を取り出した。

…徹底してるな。

「変な声になるけど、笑わないでくれよ、ルルシー先輩」

「笑うかよ…」

お前を笑う権利なんて、俺にあるものか。

意を決して、ルリシヤはルヴィア嫁の携帯にダイヤルした。

「…繋がりそうか?」

「どうだろうな…。繋がれば良いが…」

固唾を飲みながら、受話器を握るルリシヤを見つめる。

…こんなに緊張する電話が、未だかつてあっただろうか。

すると。

ルリシヤが、こちらに向かってぐっ、と親指を立てた。

「…!」

繋がったのだ。

時間を無駄にすることなく、ルリシヤはストップウォッチを片手に、早口で捲し立てた。
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