The previous night of the world revolution4~I.D.~
しかも、ルヴィアの横には。

「君、確か…。ヴァルタだったね?箱庭帝国の」

「あぁ。ルアリスに頼まれてな」

そうだ。使者を送る、とルアリスから書簡が来てたな。

「ありがとう。箱庭帝国の助力に感謝するよ」

「私は元々、ルレイアが気に入ってるからな。協力は惜しまない」

それは有り難い。今は、猫の手やアリューシャの手すら借りたい状況だからな。

すると、ルヴィアが食い気味に、

「…アイズさん。ちょっと聞いて欲しいものがあるんですが」

「…聞いて欲しいもの?」

「ルルシーさんや、ルレイアさん達に繋がる…かもしれない手がかりがあって」

…何だと?

「何?」

「うちの嫁の携帯に、怪しい音声ファイルが届いたんです。誰からのメッセージかも分からないし、ただの悪戯かもしれませんが…。でも、嫁曰く、気になる、と」

ルヴィアの嫁と言ったら、先日占いをしてくれた、箱庭帝国の秘境の里の一族じゃないか。

そのルヴィア嫁が、気になる…と言うなら。

確かに、何らかの手がかりである可能性は高い。

「色んな複数の言語を組み合わせてる…?みたいなメッセージで…。俺には解読出来ないんですが…」

「分かった。ちょっと聞かせてみてくれる?」

「はい」

ルヴィアは、フューニャさんの携帯を操作し、謎の音声ファイルを再生してくれた。

声は小さく、しかもヘリウムガスで声を変えていて、誰の声なのか、これだけでは特定出来ない。

しかも所々にノイズが入り、正しく聞き取ることもままならない。

だが。

「…どう、でしょう?アイズさん」

「もう一回再生してくれる?」

「は、はい」

耳を澄ませ、私はその聞き取りづらい音声を、何とか聞き取ろうとした。

物音を立ててはいけないと思ったらしく、アリューシャは鉛筆を握ったまま、ピタッと制止していた。顔までひきつってる。

立て続けに三回ほど再生してもらい、ルヴィアが四回目を再生しようとしたところを、手で制した。

「どうでしょう…。何か関係あると思いますか?」

「…そうだね。確かにこのメッセージ…。色々な言語を組み合わせるようだ」

「そうなん?アリューシャ全然分かんなかった」

ルティス語や、アシスファルト語じゃないからね。

もっと少数民族の…専門の通訳がいないと、会話もままならないほどに廃れた言語だ。

「私が判別出来ただけでも、八種類の言語が使われてる。更に、暗号も交えているらしい」

「マジかっ」

マジだよアリューシャ。

そして、私はこんなにたくさんの種類の言語を解し、かつ複雑な暗号を組み合わせながら淀みなく話せる人物を、この世で二人しか知らない。

「…間違いない。このメッセージの送り主は…ルレイアか、あるいはルリシヤのどちらかだ」

「…!」

あの二人以外、誰も思い付かない。

ファイルの質が悪いのは、遠い異国の地から、海賊サイトならぬ、海賊回線を使って連絡しているから。

声を変えていたり、複数の言語や暗号を交えて分かりづらくしているのは、「敵」に見つからないようにする為。

私やシュノではなく、わざわざフューニャさんに送ったのは、フューニャさんは堅気の人間であり、漏洩の可能性が低いと判断したから。

そう考えれば、辻褄が合う。
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