The previous night of the world revolution4~I.D.~
アシミムの目的は、王位ではない。

ただ、ミレド王に誘拐された弟を取り戻したいだけ。

あとは…殺された父親の復讐、と言ったところか。

その為に、アシミムはルレイアを利用し、ミレド王を暗殺しようとしている。

そこまでの経緯は分かった。

しかし、ここで最大の疑問が沸いてくる。

「…で、お前は何でそれを知ってる?」

そして、何故俺達にそれを話す?

お前は、そもそも何者だ?

「箱庭帝国の出身じゃないのか。お前は」

「…そうです。ここからは…私の話をした方が良いみたいですね」

あぁ。是非ともそうしてくれ。

「私は箱庭帝国、秘境の里に住む一族の出身です。私の…妹のことをご存知だそうですね?」

「知ってるよ」

言わずもがな、ルヴィアの嫁だ。

彼女に姉がいるなんて、聞いたことがないが…。

箱庭帝国の、しかも少数民族の出身ということで…恐らく、彼女はルヴィアにも、多くを話してはいないのではないだろうか。

ルヴィアの性格的にも、好奇心に駆られて嫁の故郷のことを根掘り葉掘り聞いたりはしないだろうから。

話してくれるなら聞くが、話したくないなら話さなくて良い。あいつなら、そう言うはずだ。

「幼い頃、箱庭帝国の一部では、他国から人買いが来ていたんです。元々箱庭帝国は豊かな国ではありませんし、それに当時、私の家族は困窮していて…それで、私が売り物に選ばれたのです」

「…!」

そんなことが…行われていたのか?この現代社会で?

あの閉鎖された箱庭帝国なら、有り得ない話ではないが…。

「…何故、妹ではなく君が?」

「妹は幼いながらも、私より遥かに一族の…呪術の才能がありましたから。一方私は、一族の生まれなのに、呪術の才能はからっきしでした。だから、両親は将来有望な妹を手元に残して、私を売ったのです」

「…」

「私が売られて国を離れたとき、妹はまだ二歳かそこらでしたから、妹は私を覚えてはいないでしょう」

…そういうことだったのか。

「…恨んでるんじゃないのか?家族のことを…」

才能がないからと、自分を金で売った両親。

そして、才能に恵まれた妹のことも…。

しかし。

「恨んでなんていませんよ。むしろ、感謝しているのです…。あの国に残っていたら、私も粛清されていたでしょうからね。国外に逃がしてくれたからこそ、私は今生きていられるのです」

そう考えれば…確かに、…まぁ、箱庭帝国だからな。

ルヴィアの嫁も、一歩間違えれば…「粛清」されていたとしても、おかしくなかった。

彼女達が生まれたのは、そういう国だ。
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