The previous night of the world revolution4~I.D.~
「地下室の中で…僕はずっと、自分の罪に責められていた。僕が傷つけた女性達が、僕の枕元に立って僕を責めるんだ。あの地下室で、僕は初めて、自分が何をしたのか知った…」

「…」

…そんな、まさか。

だってこの男は、シラノと、シラノのお母さんを。

他にも多くの奴隷達を…平気で傷つけて…。

「気が狂うほど責められて、これが僕に与えられた罰なんだと思った。毎日彼女達に謝って、謝って…そうしたら、いつの間にか彼女達が枕元に立たなくなって。それで許されたつもりでいた、けど…。でも、そんなはずがないんだ。僕は、まだ許されてない」

「あ…当たり前でしょう」

殺された人間の恨みが、そう簡単に消えるものか。

「僕は彼女達だけじゃなく、彼女達を大事に思っていた人も…君も…傷つけてしまったんだ。本当に申し訳ない。彼女達が枕元に立つまで、僕は彼女達を同じ人間だと思っていなかった。愚かで、無知だった…」

「…」

「殺されても、文句は言えない。むしろ殺されるべきなんだ…」

…その通りだ。

この男は殺されるべき人間だ。

シラノとお母さんを殺して、私を苦しめて…復讐に取り憑かれて…。

「だ、駄目ですわ!ラトヴィ…」

アシミムは、諦めようとする弟を止めたが。

「良いんだ、姉上。これは当然の報いなんだ。あの世に行って、彼女達に謝ってくるよ」

…この男は。

残酷で、冷酷で…奴隷のことなんて、家畜のようにしか思っていなくて…。

だから、死んだシラノ達の代わりに、私が復讐を…。

「…わ、私は…」

「…ねぇ、華弦さん」

ルレイア・ティシェリーだった。

先程までの、ふざけた様子は消えていた。

「余計なお世話かもしれませんけどね」

今度は、ルルシーも止めなかった。

言うべきことだと思ったのだろう。

「…もし俺とルルシーがあなたとシラノさんの立場だったとして、殺されたのが俺だったとしたら…」

聞いてはいけない。

これを聞いたら、私は復讐を…。

でも。

「…ルルシーに復讐して欲しいなんて思いませんよ。過去と復讐に囚われるより、新しい幸せを見つけて、生きて欲しい…。そしていつか死んだとき、こんな楽しいことがあったんだよって、お土産話をたくさん持ってきて欲しいです」

「…!」

「…あなたのシラノさんは、何て言うんでしょうね?」

…シラノだったら。

あの子だったら…きっと。



















…シラノの明るい笑顔が、見えた気がした。

彼女は泣いていなかった。

苦しんでもいなかった。

ただ嬉しそうに…穏やかに…。

幸せになってね、と呟いたように見えた。





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