The previous night of the world revolution4~I.D.~
まさか私が裏切っていたなど…思いもよらなかったんでしょうね。

「…本当に、おめでたいお嬢様ですね、あなたは」

「俺も同感ですよ!本ッ当頭の中身まで縦ロールが詰まって、もごもごもご」

「黙ってようなルレイア…!」

ルルシーとルレイアには構わず、アシミムの後ろに控えていたルシードが、険しい顔で私を睨んだ。

アシミムの味方であるルシードにとって、アシミムに仇為す私は、ルシードの敵なのだろう。

受けて立ってやる。昨日の傷がまだ癒えてないルシードなど、私の敵ではない。

それに。

「…言っておきますけど、ルシードさん。あなたに華弦さんの邪魔はさせませんよ。最初からそういう約束なんでね」

ルレイアが、ルシードにそう言った。

ルシードは悔しそうにルレイアを睨んだが、そんなもので動じるルレイアではない。

「大体、全部そいつの自業自得でしょう。奴隷とはいえ、相手は同じ人間なのに。奴隷に残酷な扱いしておいて、何で自分が恨まれてないと思うんです?何悲劇の主人公みたいな顔してるんです?悪役ですよあなたは。何処からどう見ても」

「…!」

「感動の再会お疲れ様。そして永遠の別離おめでとうございます。自分にはこれから明るい未来が待ってると思いました?あはは、ざまぁ~♪あなたの未来ここで終わりで~す!一生モグラでいた方が幸せでしたね。ウケる~!姉弟揃ってゲロ顔さらし、もごもごもご」

「煽るなって言ってるよな…!」

言い方はともあれ。

ルレイアの言うことは、全て正しい。

「…あなたが嫌がることが何なのか、ずっと考えていました」

「か、華弦…。やめて、やめてちょうだい…」

「…お母さんと、シラノと…この男に傷つけられた、全ての人間の仇です」

私は、喉が破れるほどナイフをつよく当てた。

「…最後に言い残すことがあったら、聞いてあげましょう」

「…」

きっとラトヴィは、みっともなく泣いて命乞いをするだろうと思った。

自分が傷つけた人間のことは棚に上げて、悲劇の主人公みたいな顔をして、自分だけは助けてくれと言うはずだと。

しかし。

「…済まなかった」

「…え?」

ラトヴィは泣くこともなく、命乞いをすることもなく。

ただ、全てを諦めた顔で、そう言った。
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