The previous night of the world revolution4~I.D.~
いきなり覚醒したオルタンスは、いそいそと引き出しから封筒を取り出していた。

「…何だそれ」

「これか?ハムスターランドのチケットだ」

「早速行く気かよ!」

お前は良いとして、ルレイアはまだ帰国したばっかりなんだぞ。

少しは休ませてやれ。

ってか、結局シェルドニアで何があったのかとか、ミレド王は死んだが、あいつのルティス帝国侵攻計画はどうなったのか、聞かなきゃならないことはたくさんあるだろう。

その前に、まずハムスターランドかよ。

何もかも全部終わったらにしろ。

それに、何もかも全部終わったとしても、ルレイアはお前とハムスターランドになんか行かんだろう。

そこ分かってるのか?お前は。

分かってないんだろうな。ハムッキー抱いてわくわくしてるし。

「よし、会いに行こう。ルレイアに会いに行くぞ、俺は」

「勝手にしろよ…」

「アドルファス、ルーシッドも行こう」

…は?

ルーシッドも俺に負けじと、は?という顔だった。

「一人で行くと恥ずかしいじゃないか。一緒に来てくれ」

「はぁぁ…!?何で俺達が」

「あぁ、それからルシェも誘おう。皆で行ったらルレイアが喜んでくれるかもしれない」

「うきうきすんな気色悪い!」

お前はルレイアを何だと思ってるんだよ。

あと、行くならせめて、そのぬいぐるみは置いていけ。何で小脇に抱えたままなんだよ。

挙げ句カチューシャまでつけっぱなし。

ふざけてんのか。

色々突っ込みたいことはあるが、オルタンスは当然スルーである。

いそいそとチケットを懐に入れ、ぬいぐるみを抱えたまま、外出の支度を始めてしまった。

…。

純粋にこいつと外に出るの嫌なんだけど。俺だけ?

こいつが変人だと思われるのは勝手だが、俺が変人扱いされるのは嫌なんだけど。

「あ、アドルファス殿…」

ルーシッドの目が、何とかしてくれ、と言っていた。

…こっちの台詞だ。

何とかしてくれよ、こいつ。

「俺だって、こんな変人と一緒に出歩くのは御免だが…」

…でも、そうも言っていられないのだ。

何故なら。

「一応、ルレイア達の口から事の顛末を…おおよそでも聞いておかないといけないだろう」

放っといたらこいつ、ひたすらハムハム言って、重要なことは何も聞かずに帰ってくるぞ。

「…では、やっぱり…一緒に…」

「…行かないと駄目だろ。気持ちは分かるが…」

こんな、ハムスターランド全開の変人と一緒に出掛けるなんて、俺達も同類だと思われそうで嫌だ。

しかし、これも仕事だ。

…嫌な仕事だなぁ。

別行動したいんだけど。

「我慢しろルーシッド…。ルティス帝国の平和の為だ…」

「ルティス帝国は平和でも…俺達の心は、平和とは程遠いですよ…」

言うな。
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