The previous night of the world revolution4~I.D.~
「ルルシー先輩、どうしたんだ、ルレイア先輩は」

うわ言で助けを求めるルレイアの姿は、酷く弱々しかった。

俺はともかく、ルリシヤはこんな風になったルレイアの姿を見るのは初めてだろう。

「分からない。起きたら、ルレイアがうなされてて…」

「そうか…。…ルレイア先輩、過呼吸を起こしてるな」

過呼吸だと?

ルリシヤに指摘されるまで、気がつかなかった。

ルレイアは、酸素を求めるように荒い呼吸を繰り返していた。

「過呼吸って、どう…。紙袋とか…」

確か紙袋を口に当てれば良いんじゃなかったか?

しかし。

「いや、その方法は危ないんだ。座らせて、落ち着くまで待った方が良い」

ルリシヤはそう言って、ルレイアを抱えるようにして座らせ、背中をさすってやった。

狼狽えに狼狽え、必死に大声でルレイアに呼び掛けるだけだった俺なんかより、ルリシヤは余程冷静だった。

「ルレイア先輩、ゆっくりで良いから、落ち着いて深呼吸してくれ。何にうなされていたのか知らないが、ここにはルレイア先輩の敵はいない。いるのは味方だけだ」

「はぁ…はぁ…」

ルレイアは苦しそうに喘ぎながらも、少しずつ正気に戻ってきたのか、視線だけで俺の方を見た。

俺のことが…ちゃんと分かっているのだろうか。

「ルレイア…。大丈夫だ、俺が…。俺が守ってやるから。お前を傷付けるものから、全部…俺が守るから」

苦しいのはルレイアに違いないのに、俺の方が泣きそうだった。

ルレイアが昔の…ルシファーに戻ってしまったようで。

別にルシファーだった頃が嫌いな訳ではない。ルレイアだろうがルシファーだろうが、俺はどちらでも構わない。

だが、ルシファーが…傷つき、苦しんでいた頃のルシファーだったら…それは、それだけは、耐えられなかった。

もう既に充分傷ついたはずの彼が、これ以上傷つくことには、耐えられない。

「大丈夫だ、ルレイア…。大丈夫だから…」

俺は、必死にそう呼び掛けた。

ルレイアが二年間入院していた頃…ただ寄り添って、呼び掛けるだけで…何もしてやれなかった無力な自分を思い出して、寒気がした。
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