The previous night of the world revolution4~I.D.~
いやはや、ルルシーの腕の中の回復量よ。

ここ病院なんじゃないの。

今なら、癌も認知症もルルシーの腕の中にいれば治るのでは?

なんて、冗談が思い付くようになったのだから、かなり回復したということだ。

「本当に平気なのか?医務室に…」

「行かなくて良いですって。悪夢で嫌なこと思い出しただけですし…。もう落ち着きました」

「…それなら良いけど。でも…」

わー。ルルシーの心配性が発動しちゃってる。

我ながら酷く取り乱した自覚があるので、無理もない…とは思うが。

それにしても、不思議だ。

「…何で俺、あんなに取り乱しちゃったんですかね?」

「は?」

それがさっぱり分からない。

「いえ、昔の夢を見ることは度々あるんですけど…いつもはちっとも怖くないんですよ。何ともないんです。それなのに、何で今日はあんなに怖くなったんだろう」

自分があの夢の何に怯えていたのか、何がそんなに怖かったのか。

落ち着いて考えてみると、全然分からない。

「それは…体調が悪くて、不安定だったからじゃないか?」

「うーん…そうなんですかねぇ」

体調が悪いときに嫌な夢を見て、怖くなった…と言うよりは。

嫌な夢見て怖くなったから、体調も悪くなった、と言うのが正しい…ような。

うん、やっぱり分からない。

「それに…夢の中でずっと…変な音楽が流れてて」

それも、ずっと気になっていたのだ。

「…変な音楽?」

「はい。何の音楽か…。多分この船で流れてる曲だと思うんですけど、あれが頭に染み付いて離れないんですよね」

耳慣れない曲だから、余計に印象に残っているのだろうか?

常に部屋の中であの音楽のCDをかけられてるみたいな気がする。

「まぁ…独特な曲だからな。俺も耳につく」

やっぱり。ルルシーもか。

「いや、音楽はさておき…。大丈夫なのか?本当に。食欲は?昨日食べてないだろ」

「あ、そういえばそうか…うーん。あんまり食べる気にはならないんですけど」

「駄目だ。何か食べろ。ルームサービス頼んでやるから」

「じゃあ、ルルシーがあーんしてくれたら食べます」

「分かった。してやるからちゃんと食べろよ」

これには、さすがの俺もびっくりした。

いつもなら、ふざけんな自分で食え、と突き放されるところなのに。

俺、さっきまで本当に酷かったんだな。

ルルシーが躊躇いなくあーんしてくれることに同意するなんて。

まぁ、してくれると言うのなら、遠慮なくしてもらうが。
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