The previous night of the world revolution4~I.D.~
「アイ公~…。やっぱ分かんない?」

「そうだね…」

あぁ、いけないなぁ。溜め息なんて。

私が溜め息をつくと、アリューシャを余計心配させてしまう。

良くないと思いながらも、どうしても溜め息が出てしまう。

あまり不安や懸念を口にしないようにはしているが…言わなくても、伝わってしまうのだろう。

いつもなら昼寝しているはずのアリューシャも、ここ数日はずっと起きている。

それどころか、私に負けないくらい不安そうな面持ちだ。

おまけに。

「アイズ!」

血相を変えたシュノが、ノックもなしに私の執務室に飛び込んできた。

「あぁ、シュノ…。お疲れ様。帰国したんだね」

アシスファルト帝国に出張に行っていたはずのシュノ。

帰ってくるのは明後日の予定だったが…この様子では、恐らく「事情」を聞いて、帰国を早めたのだろう。

私の労いなど聞こえていないかのように、シュノは私に詰め寄ってきた。

「ルレイア達と連絡が途絶えたって、本当なの!?」

やっぱり、その件か。

まぁ、シュノをここまで取り乱させるのだから、それ以外には有り得まい。

「残念ながら、本当だよ。現状、いかなる手段を持ってしても…ルレイア達と連絡を取ることは出来ない」

「…そんな…!どういうこと?何でそんなことになってるの?」

「…分からない」

非常に、情けないことに。

私は、そう答えるしかない。

分からない。そう…何も分からないのだ。

「私も、取り得る手段の全てを使って調べてる。でも分からない。『ホワイト・ドリーム号』が今何処にいるのか。ルレイア達が、何処にいるのか…」

「そんな…!」

「『ホワイト・ドリーム号』が上陸するはずの港には、いずれも停泊した記録がない。それは確かだ」

だから、つまり。

「現状、考えられる一番の可能性は…船が何らかの事情で、航行不能に…」

「やめて!!」

シュノは、青い顔をしてそう叫んだ。

彼女にとっては、考えるだけで気を失いそうになるだろう。

私にとってもそうだ。こんなことは考えたくない。

でも…認めない訳にはいかない。

ルレイアとの連絡が取れなくなった。

そもそも、船が何処にいるのかも分からない。

ならば…考えられる可能性は、何だ?

…良くないことしか、思い付かないだろう。
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