遣らずの雨 上
こんなこと、死と向き合っていたあの頃
は一生できないと思っていた。
誰かのことを特別に思い、
その人を思い浮かべるだけで幸せな
気持ちになり、目が合うだけで心臓が
少し早く鼓動する
『紗英』と呼ばれただけで、
涙が溢れそうなくらい切なくなった。
皐月‥‥私‥‥今ね‥‥
ものすごく苦しいけど、
少しだけ幸せになりたいと思えるよ。
そう願っても皐月は許してくれる?
「酒向さん‥‥話してくださって
ありがとうございます。
今はまだ話せませんが‥‥
その時が来たら聞いて欲しいです。」
『フッ‥‥。
体が冷えてしまったね。
宿に戻って温泉に入らないと。』
カランカランと下駄の音が鳴り響き、
五十鈴川の流れるせせらぎの音を
聞きながら、酒向さんの隣で大きく
息を吸い込んだ
この先何か変わるかもしれないし、
何も変わらないかもしれないけど、
確実に止まったままの時間が
動き出したのは分かる。
『そう言えば、ロビーにアイスが無料で
置いてあったよ。』
「本当ですか?それは食べないと損
ですね。」
月明かりと街灯に照らされる整った
美しい顔立ちと浴衣姿に、先程の
手の温もりを思い出す
一度知ってしまうと、人はこんなにも
欲張りになるんだと初めて知る
報われない想いだからこそ、
今だけは素直にこの気持ちでいたい
酒向さんが好きだ‥‥‥
恋人になりたいわけじゃない。
酒向さんの心の中にいる彼女さんを
含めて今の酒向さんが好きだから、
隣を歩くのが私でなくてもいい。
あと何年一緒に働けるかも分からない。
あとどれくらい私も生きれるのかも
分からない。
ただ離れる日が来るなら、その時は
酒向さんが幸せを感じ笑顔で居てくれたら、きっと生きてきて良かったと思う
『どうかした?』
「明日の朝食は何だろうって
考えてました。」
『フッ‥‥出汁巻が出るといいな。』
少しだけ目を細めて笑う綺麗な顔も、
あと何回見る事が出来るだろう‥‥
今はこのままもう少しだけ居たい‥‥
は一生できないと思っていた。
誰かのことを特別に思い、
その人を思い浮かべるだけで幸せな
気持ちになり、目が合うだけで心臓が
少し早く鼓動する
『紗英』と呼ばれただけで、
涙が溢れそうなくらい切なくなった。
皐月‥‥私‥‥今ね‥‥
ものすごく苦しいけど、
少しだけ幸せになりたいと思えるよ。
そう願っても皐月は許してくれる?
「酒向さん‥‥話してくださって
ありがとうございます。
今はまだ話せませんが‥‥
その時が来たら聞いて欲しいです。」
『フッ‥‥。
体が冷えてしまったね。
宿に戻って温泉に入らないと。』
カランカランと下駄の音が鳴り響き、
五十鈴川の流れるせせらぎの音を
聞きながら、酒向さんの隣で大きく
息を吸い込んだ
この先何か変わるかもしれないし、
何も変わらないかもしれないけど、
確実に止まったままの時間が
動き出したのは分かる。
『そう言えば、ロビーにアイスが無料で
置いてあったよ。』
「本当ですか?それは食べないと損
ですね。」
月明かりと街灯に照らされる整った
美しい顔立ちと浴衣姿に、先程の
手の温もりを思い出す
一度知ってしまうと、人はこんなにも
欲張りになるんだと初めて知る
報われない想いだからこそ、
今だけは素直にこの気持ちでいたい
酒向さんが好きだ‥‥‥
恋人になりたいわけじゃない。
酒向さんの心の中にいる彼女さんを
含めて今の酒向さんが好きだから、
隣を歩くのが私でなくてもいい。
あと何年一緒に働けるかも分からない。
あとどれくらい私も生きれるのかも
分からない。
ただ離れる日が来るなら、その時は
酒向さんが幸せを感じ笑顔で居てくれたら、きっと生きてきて良かったと思う
『どうかした?』
「明日の朝食は何だろうって
考えてました。」
『フッ‥‥出汁巻が出るといいな。』
少しだけ目を細めて笑う綺麗な顔も、
あと何回見る事が出来るだろう‥‥
今はこのままもう少しだけ居たい‥‥