資格マニアの私が飛んだら、なぜか隣にこどもと王子様が寝てました
・・・
あの後、やはりエインは戻ってこなかった。
捜索はさせているものの、今のところ何の手掛かりもない。
こうなると、捜索を命じた者に、どこまで王――ユーリの手が及ぶのかも疑問だ。
唯一ほっとしたのは、王自身もエインが行方不明になったことを知って驚いていたことだ。
「少し休め。あまり考えても、どうしようもないこともある」
「……うん……」
部屋に帰ると、ノアくんは待ち疲れて眠っていた。
目の端に残った涙をそっと拭う私に、ジルが「起きていらっしゃる時は、泣いていなかったんですよ」と教えてくれた。
ノアくんなりに状況を分かっていて、我慢させてしまったのだろう。
そう思うと悲しくて、私の方が泣いてしまいそうになるのを必死で耐えた。
「ははしゃ、とと」
待っていると首を振り続けたノアくんは、そのまま倒れるように眠ってしまったらしい。
綺麗に寝かせようと抱き上げると、何かを察したのかパチリと目が開いて飛び起きた。
「ごめんね。お待たせ」
抱きしめると、ノアくんの温もりに安心する。
「悪いかったな、ノア。でも、もう少しだけ、父様に時間をくれ」
「え……? 」
ぽかんとしたのは私だけで、ノアくんはなぜか不承不承頷いて大人しくジルに抱っこを求めている。
「どっちが子どもか分からないな。いや、オトナだからか? 」
「……そういうことだけじゃない。今のうちに、エナと話しておきたいことがあるんだ」
レックスの茶々を否定したような、肯定したような。
この時ばかりはノアくんにひた謝りしながら、ユーリはレックスに重厚な警備を命じていた。
やがて、みんなが外に出るのを見送ってから、彼は私を抱きしめてほっと息を吐いた。
「話……って? 」
「何となく、一区切りな気がしただけだ。何も解決していないが、相手が奴なら事態は思った以上に深刻かもしれない。だから、ノアには申し訳ないが、お前との時間を確保していたかった」
ヴァルモンド。
この国において重要人物には違いないが、それ以上に最悪の黒幕だということか。
「勘違いするな。俺たちに、 “最後の夜” なんてものはない。……絶対に、そんなものにはさせないから」
顎をユーリの指先が捉え、有無を言わせず見つめられる。
「……うん」
優しく髪を梳かれて、微睡むように目を瞑り――でも、まだ睡魔は襲ってきてくれなかった。
ふと、ユーリが吐息を漏らした音が聞こえ、そんな場合ではないのにサッと頬が赤みを帯びたのが自分でも分かる。
「嬉しいが、まだ “スッキリした” 状況ではないと思うが。……いいのか」
状況は何も変わらないどころか、悪化している。
それどころか、それこそ近々「ユーリと過ごす最後の夜」を迎えてしまいそうな雰囲気すらある。
それなのに――バレたのだ。
そんな気配を感じ取ったからこそ、私はユーリを求めてしまっていることが。
「いいか。俺を受け入れたとしても、今はまだそうじゃなかったとしても。これは最後の日じゃない」
そうだ。
何もかも諦めたから、いつか別れるのだから仕方ないと投げてしまったから、ユーリに抱かれるのではない。
そんなのは彼に失礼だし、何もかもユーリの責任にして身を委ねるなんて――いや、奪わせてユーリのせいにするなんて最低だ。
「いい顔だ。……まあ、本当は、このまま責任を取らせてくれてもいいのだが。その前に、話しておきたい」
決意を胸に顔を上げると、ユーリの両手がゆっくりと頬を包む。
「相手がヴァルモンドなら、きっと答えはこの中にあるのだろう」
――あいつは、母……俺の生みの親の親類だ。