Thirty’s
「もしもし。」


『ゴメン、今大丈夫?』


「ああ、今改札を出て、これから買い物するところ。」


『じゃ、よかった。どうだった、新しいお仕事は?』


「心配して、電話くれたんだ。」


『うん。』


「わざわざありがとう、悪かったね。」


『ううん。それでどんな感じ?』


「うん、まぁいろいろ大変そうだよ。でも、ま、頑張るしかないけど。」


俺がこんな言い方をすると


『そっか、大変だったね・・・。お疲れさまでした。』


加奈は労ってくれる。


「ありがとう、加奈の声を聞いたら、取り敢えず疲れが吹き飛んだよ。」


『なら、よかった。』


「じゃ、夕飯用意して待ってるから。」


俺が言うと


『ごめん、今日も遅くなりそうなの。本当は直接話を聞ければよかったんだけど・・・。』


申し訳なさそうな加奈の声が返って来る。そっか、だからわざわざ電話して来てくれたのか・・・。


『だから、今日は私の夕飯は大丈夫だから、外で美味しいものでも食べて、早めに休んで。』


「そっか・・・じゃ、悪いけどそうさせてもらうよ。」


『ううん、私の方こそごめんね。』


「大丈夫。じゃ、加奈もあんまり無理しないようにな。」


『ありがとう。』


こうして通話を終えた俺たち。スマホをしまって歩き出しながら


(加奈に気を遣わせちゃったな・・・。)


そのことが申し訳なくもあり、でも嬉しくもあった。


(じゃ、お言葉に甘えて、明日に備えて、がっつり肉でも食って帰るか。)


そんなことを思った途端、ふいに唯の顔が浮かんで来て


(それにしても明日からどうなるんだ・・・。)


心が重くなる。


(唯のこと、ちゃんと加奈に話すべきだったかな・・・。)


そんな思いも浮かんで来たが


(そんなことをさっき話しても、妙な心配をさせるだけで、仕事中の加奈の迷惑になるだけだし、それに俺がちゃんとすれば済むことだからな。それにあんまり目に余るようなら、白鳥先輩を経由してでも社長に訴えてやれば、唯だって、それ以上バカな真似はしないだろう。)


そう思い直した俺は、夕飯のことに頭を切り替えていた。
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