No Title





今日は木曜日。
こないだ来週も行くと約束をしてから一週間。なぜか続いているメッセージのやり取りでは、他愛のない話をしている。


同じ教室にいるのに、全く直接話したりしない。
菊池蒼伊がわたしに話してるのを見たら、みんなびっくりしちゃうだろう。


はじめて話した日からクラスメイトの菊池蒼伊をみても、やっぱり剛くんや音楽部のひと、あとクラスの男子とちょっと話してるくらいしか笑ってる瞬間とかもレアだし、女子とは事務的会話しかしないらしい。


無意識で追ってしまうのは、みんなの知らない菊池蒼伊のことを知ってしまったからで、それ以上も以下もない。
だから、いい感じとかいうのはやめて欲しい。
しかも、剛くんに誤解されるのは、とても面倒な気がするし。



「わたしに隠してたのにやましいことはないって?」

「隠してたわけじゃないし、聞かれてないもん」

「あーいえばこういうんだから、ミサキって」

「残念ながら涼子や剛くんが期待するようなことはないから。ただ偶然会っちゃっただけ」

「会っちゃった?」

「……部活の合間に気分転換に屋上に行くの、木曜日は。そしたらこないだ、たまたま菊池蒼伊もいて、っていうだけ」

「っていうだけ」

「だけ!剛くんのバンドメンバーなのも、剛くんが絶賛してるのも知ってるから、ほんとに歌上手いんだなって思いました!って剛くんに言っといて!それだけですって」



剛くんとは1年の頃からクラスが一緒で、クラスの男子の仲じゃ一番喋る人。それも、涼子と仲がいいからだけど。
剛くんは自分のバンドメンバーのことが大好きで、口から出てくるのは彼らのことばかりだ。


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