No Title
「いや、じゃあどうすればいいんだよ」
「会釈くらいすればいいじゃん」
「会釈って、教室でするもんじゃないだろ」
「そんな決まりないし。ぷいってされたらなんか嫌でしょ」
「急に話しかけても変だろ」
「変じゃないよ」
「あー、じゃあ話しかけて欲しいの?」
にやり、口角を上がったのがわかる。
しかも、なんだか意地悪な笑みを浮かべて。
わたしは頭で理解したあと、自分の顔に熱がぶわっと広がるのを感じた。
「そ、ういうわけじゃないし!」
「へえ?」
「なんでにやにやしてんの!こっち見ないで」
「なんだよ、こっちみんなとか言うのに今度はこっち見るなって?」
「それとこれとは違うし、その顔、ウザすぎるし!」
「へえ?比奈瀬深咲は素直じゃねえんだな」
「ちが、わたしは目が合ったのに話しかけないで無視されるのが嫌って言ってるだけだし!」
「話しかけて欲しいってことじゃね?それ」
「そういうわけじゃないじゃん!話しかけないならこっちみんなし!」
「ふは、ハイハイ、見てすみませんでしたね」
なんで私がこんなに顔真っ赤にして弁解みたいなことをしてるんだ。
まるで話しかけて欲しいみたいだ、いや、間違ってはないのかもしれないけど。
なんかそれって、すっごく誤解されてそうで、ほんとイヤ。
そんなつもりないのに、サイアク。恥ずかしくて、今すぐここから逃げたい。
ケラケラと楽しそうに笑う菊池蒼伊がうざすぎて、ぽかぽかと肩をたたいた。
「いてえ」なんていいながら、まるで俺の勝ちだなと誇らしげな顔が、ちょうむかつく。
そっちだってこっちが楽しそうってわかるくらいはわたしのこと見てるくせに。
なんて、思ったけど言わない。また、勝てる気がしないんだもん。