獅子の皮を被った子猫の逃走劇

先輩といっしょ

 「おいし〜!!本当にありがとうございます!!」
 「ん」


 先程までテンションが下がっただの何だの言っていた私だけど、今はもう有頂天だった。

 何故こうなったのかというと、それは少し前に遡る。


 案の定、先輩と歩く道中はお互いに無言だった。

 目的地のある龍ヶ崎の南は、ちょうど私の家のある方面と一緒で。

 私がそのみちを一人で登下校する際には、大なり小なり絡まれることが多かったのに、今日はそれが少しもないものだから不思議に思いながら歩いている時。

 ある匂いが私の鼻をくすぐった。

 パッと匂いの元を見れば、私の大好物の名前がプリントされている上りが。

 ……どうしよう、食べたすぎる!

 その大好物とは、たい焼きのことである。
 ちゅーるを前にされた猫のように、たい焼きには目がない。

 先日、叔母が近所にたい焼き専門店ができたと言っていたが、土地勘のない私はまだ行っていなかった。

 本当は今すぐにでも飛び込みたいけど!物事にはTPOというものが!

 今はその時じゃない、今度買いに行こう、と自分に必死に言い聞かせている時に、斜め上から神様が舞い降りた。


 「あそこ、寄るか?」
 「え、いいんですか!?」
 「別にいいだろ」


 神様もとい、折田先輩は私の食いつき様に驚いた表情をしながらも首肯してくれた。


 そして、今に至る。
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