獅子の皮を被った子猫の逃走劇
 やばい、美味しすぎる……!

 焼き立てのたい焼きの美味しさとは何たるや。

 たい焼きの美味しさを噛み締めていると、ふと視線を感じた。

 見上げると私をガン見している折田先輩。

 馬鹿な私は、そこではたと気づく。

 ――先輩の分を買っていない!!

 お仕事中を中断させてたい焼き屋さんに寄ったというのに、一人で美味しい美味しいと隣で食べる後輩。

 あまりにも失礼が過ぎる。

 今ここでもう一個買いに行く?
 でもそれだと、如何にも先輩の分を忘れていたという感じになってしまう。

 瞬時に脳内で考えた結果、もうこれしかなかった。


 「あの、折田先輩も食べますか、?」
 「……一口いいか」
 「はい、どーぞ!」


 これで良かったのかということはとりあえず置いておいて。

 食べると言った先輩の口元にたい焼きを持っていくと、くわっと大きく口を開けて噛みついた。

 その時にちらりと見えた犬歯とか、口の横についたのを拭う仕草とか、ワイルドさの中に垣間見える何かにドキッとする。

 忘れていたけど、折田先輩は超絶イケメン。

 イケメンは物を食べる姿も映えるのかと、顔面の暴力に驚いた。
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