獅子の皮を被った子猫の逃走劇

弱い自分は(⚠)

 ぞろぞろと物陰から柄の悪そうな人達が出てきた。


 「うそ……」
 「ッチ、隠れてやがったか」


 この人たちが虎月の人なんだと本能的に分かった。

 なんと言うか上手く言えないけれど、明らかにやばいと分かってしまう何かがある。

 例えれば、猟奇的な殺人犯がもつようなもの。

 実際に会ったことは無いが、この何を言っても話が通じなそうな雰囲気と背筋の冷える感覚は、そう例えるしかなかった。


 「虎月のトップが、うちの領域に何の用だ」
 「おお怖い怖い。龍ヶ崎のワンちゃんはよく吠えるなあ。俺たちはただ散歩してるだけだっつーのに、なあ?」


 仲間とイヒヒ、と気持ちの悪く笑う虎月側は5人。

 折田先輩の口ぶりから、中央の男が虎月のトップなのだと分かった。

 どんどんこちらに詰め寄ってくる。

 「その後ろに隠れてるチビがお前らのトップか?」
 「……だからなんだ」
 「いや、トップが背中に守られてる奴だとは龍ヶ崎も落ちぶれたもんだなってな」
 「っ……」
 「アイツに勝ったとか言うからさぞ楽しませてくれる奴なのかと思えば、子鹿みたいに足震わせて」

 上から下まで、文字通り全身を舐めまわすように見られて、吐き気がする。
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