獅子の皮を被った子猫の逃走劇
 「……まあいいや。面白くなさそうだし"俺は"帰るわー」


 そう言って踵を返した男に安心したのも束の間、他の4人が迫ってきた。


 「捨て駒かよ、相変わらず気色悪ぃことすんな。……おい獅音」
 「は、はい!」
 「俺が合図したら全速力で走って逃げろ」
 「でも、それじゃっ!」
 「なめんな。こんな雑魚俺一人で十分だ、分かったな?」
 「はい……」


 本当に同じ人間なのかと疑う程の狂気を孕んだ4人の瞳はもう焦点さえあってないように見えた。

 そんな彼らはゆっくりふらふらと、けれど真っ直ぐにこちらに歩いてくる。

 ……本当に折田先輩をこの場に残して行っていいのだろうか。

 龍ヶ崎のみんなは、折田先輩は単純な武力なら現トップだと言っていた。

 もしかしたら、こんな虎月の人たちなんて一瞬で倒しちゃうのかもしれない。

 けれど、今は多勢に無勢。

 でも……、私がいたところで、きっと、足を引っ張るだけだ。

 助けになれない事がとても悔しかった。

 そして、


 「今だ!!走れ!」
 「っ!」


 その合図で、私の考えうる全力で後ろに走り出した。
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