獅子の皮を被った子猫の逃走劇


 ガラガラ。

 病室の扉が開いて、叔母と入れ替えに折田先輩が入ってきた。

 無言で椅子に座る先輩。


 どうしよう、何を言えばいい?

 ぐるぐる頭の中で考えていると先輩が口を開いた。


 「ゴメンな、痛い思いさせて」
 「いえ、ぜんぜん!……私こそ、あのっ、色々ごめんなさい」


 勢いでそう謝ると、先輩は黙ってしまった。

 えなんで静かになるの!?

 怖くて俯きながら自分の手をギュッと握りしめていた。


 その時先輩が、私の手を覆った。


 「え、」
 「お前が俺を避け続けてた時、わりときたし、お前が虎月に拉致られたって聞いて生きる心地しなかった」
 「それは……ごめんなさい」
 「もう心配させんな、」


 そう言って私の肩に額を乗せる先輩。

 そのギャップに思わずドギマギしてしまう。

 今の私、多分耳まで真っ赤だと思う。


 「俺、獅音のこと好き」
 「…………うん!?」
 「だからお前が好きだっつってんの。獅音は?」


 衝撃の発言に頭がフリーズする。

 先輩が私を好き……?

 そんなことありえるの?

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