野いちご源氏物語 〇六 末摘花(すえつむはな)
翌日、内裏の中の女官の控室に、源氏の君がふらりとお越しになった。
「ほら、昨日のお返事だ。恐れ多い文面だったから、お返事を書くのも大変だったよ」
大輔の命婦に投げるように手紙をお渡しになる。他の女官たちはそわそわして、手紙の宛先と内容を気にしている。
「紅梅の花の色のようなお鼻だったな」
と独り言を言いながら出ていかれるので、命婦はまたおかしくなってしまう。
「なぁに、その一人笑いは」
女官たちが見とがめる。命婦の適当なごまかしは通用しなくて、
「ここに赤い鼻の女官なんていないのに、何だったのかしら」
とみんなで不思議がっていた。
源氏の君からの手紙が宮邸に届くと、女房たちは姫君の周りに集まって拝見した。
「こんなにたくさん着物をいただいては、着物を重ねるように会えない夜が重なってしまいそうです」
白い紙にさっと書かれているのが、いかにも恋文という感じではなくて、かえって風流だった。
大晦日の夕方、源氏の君はあの古めかしい大きな箱に、姫君の着物をいろいろと入れて命婦に届けさせなさった。姫君が源氏の君に贈った着物とは色合いがまったく違う。
「こちらからお贈りした着物の色がよくなかったと、暗に仰せなのではございませんか」
誰かが不安そうに言うと、老女房たちは、
「いいえ、あれは紅色が重々しい、見事な布地でしたよ。このお着物にも引けは取りません」
と決めつける。
「お手紙だってそうですよ。姫様のお書きになる文章は堂々としてご立派でございます。こう申しては何ですが、あちらのお手紙は風流なだけで」
源氏の君をこき下ろして、口々に姫君をほめる。姫君にとっても先日の手紙は苦心作だったので、手元にも同じ文面を残しておありになった。
「ほら、昨日のお返事だ。恐れ多い文面だったから、お返事を書くのも大変だったよ」
大輔の命婦に投げるように手紙をお渡しになる。他の女官たちはそわそわして、手紙の宛先と内容を気にしている。
「紅梅の花の色のようなお鼻だったな」
と独り言を言いながら出ていかれるので、命婦はまたおかしくなってしまう。
「なぁに、その一人笑いは」
女官たちが見とがめる。命婦の適当なごまかしは通用しなくて、
「ここに赤い鼻の女官なんていないのに、何だったのかしら」
とみんなで不思議がっていた。
源氏の君からの手紙が宮邸に届くと、女房たちは姫君の周りに集まって拝見した。
「こんなにたくさん着物をいただいては、着物を重ねるように会えない夜が重なってしまいそうです」
白い紙にさっと書かれているのが、いかにも恋文という感じではなくて、かえって風流だった。
大晦日の夕方、源氏の君はあの古めかしい大きな箱に、姫君の着物をいろいろと入れて命婦に届けさせなさった。姫君が源氏の君に贈った着物とは色合いがまったく違う。
「こちらからお贈りした着物の色がよくなかったと、暗に仰せなのではございませんか」
誰かが不安そうに言うと、老女房たちは、
「いいえ、あれは紅色が重々しい、見事な布地でしたよ。このお着物にも引けは取りません」
と決めつける。
「お手紙だってそうですよ。姫様のお書きになる文章は堂々としてご立派でございます。こう申しては何ですが、あちらのお手紙は風流なだけで」
源氏の君をこき下ろして、口々に姫君をほめる。姫君にとっても先日の手紙は苦心作だったので、手元にも同じ文面を残しておありになった。